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服屋につくと、ポチが周りを見渡して目を輝かせる。
服屋の記憶すらこいつにはないのか。
「気に入ったのあるか?」
「全部綺麗。」
「服が?」
「うん。シワ一つないね。」
「売れる前の商品だからな。」
「なるほど…」
ポチがパタパタ走って一つ手に取る。
なんてことない普通のTシャツだ。
次々と手に取ってはすぐに棚に戻していく。
…何がしたいんだコイツ。
「どうかしたか?」
「ううん。…えっと、ほら。忘れてたから感動してた。すごいなぁって。」
「はぁ。感動ついでに好きなの持ってこい。好きなだけ買ってやる。」
「一つでいいよ。」
「一つじゃ洗濯中どうするんだよ。」
「洗濯?」
「洗うだろ。」
「…洗う。」
一つの服を握りしめたままポチが首をかしげた。
一度着た服を選択することすら忘れている…?
思っていたよりもコイツ重症らしい。
こんなとこにいるよりも本当に病院に連れてった方がいいんじゃないか。
「なぁポチ、お前…」
「ごめん、…ごめんね。いつかちゃんと思い出すから。全部。」
「…いや、別に無理はしなくていい。お前は不安じゃないか?何もかも0から始まってるのと同じだろ。」
「不安じゃないよ。探偵さんがいるから。」
ニッコリ笑ってそういうポチは本当に心の底からそう思っているみたいだ。
…あぁ、もうこの事を考えるのはやめよう。
「…わかった。よし、いいか。部屋着、外に出る用一式3セット。それとパンツ、シャツ、靴下それぞれ5枚。とりあえず夏服はそれでいいだろ。好きなの取ってこい。」
「俺が取ってくるの…?」
「俺に取ってこいと?」
「んー…探偵さんに選んで欲しいな、服の選び方忘れちゃった。」
コイツが来て何度目かの"忘れた"にももう慣れた。
コイツが忘れた、と言うなら
「わかった。」
と言ってやってやるだけだ。
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