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ほんの少し、嫌なことを思い出した。
ポチじゃなくて違う自分の記憶。
気のせいだって思い込むために痛むお腹を強くつねって目を閉じる。
…痛い。
痛くて、痛くて苦しくなると何もかも忘れられる気がする。
ぱ、と手を離してその場に立ち上がるとお腹のもっと奥が痛くてフラフラしてしまう。
なんだか頭も痛い。
そうだ。
お水を飲まないといけないんだった。
「…えっと、…回して……」
あの人が言っていた通りに水筒の蓋を回す。
すぐに開いた中から冷たい風が吹いてくる。
飲まなきゃ倒れちゃう。
…でも、もうこれはただのお水じゃない。
もしかしたらただの塩かも、砂糖かも。
大丈夫…きっと。
「ん、っ…」
口をつけて傾けると冷たい水が喉を通っていく。
それが気持ちよくてどんどん飲んでしまう。
たくさん飲んだら危ないってわかってるのに、止まらない。
半分くらいまで飲んでようやく口を水筒から話す。
体はなんともない。
…探偵さんのところに戻ろう。
そう思って来た道へ行こうと歩き出すと、何だか足元にぬくもりを感じた。
「…猫、…白猫!」
慌てて探偵さんにもらった写真と見比べる。
目の色も完璧に一緒だ。
やった、…褒めてもらえる。
「おいでミル、一緒に帰ろう。」
ミルはニャー、と鳴くと甘えるように俺の手へ頭を撫で付ける。
きっと甘えん坊さんなんだ。
優しく抱き上げて腕の中へおさめるとゆっくりと歩き出す。
「もう大丈夫だからね。」
何もしらない顔をして帰ろう。
猫を一匹見つけただけだって言おう。
探偵さんには何も言わない。
帰り道を歩きながらそう誓った。
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