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そっと怖がらせないように頭を撫でる。
猫は話せないから俺に本当のことはわからない。
でも、もしかしたら。
この子は 飼い主さんに酷いことをされていたのかもしれない。
「ポチ、猫はどうなった?」
「怖がってる。帰りたくないって。」
「…猫がそう言ったのか?」
「そうじゃないけど…見たらわかるよ。」
探偵さんがミルへ近付いて目を細める。
ミルは小さくなって体を縮めると喉の奥で小さく鳴いた。
帰りたくないよ、怖いよって。
そんな風に聞こえるんだ。
だって、飼い主さん事が好きならきっとすぐに飛びつくはずだから。
「ポチ、離れろ。」
「…嫌がってるよ。」
「嫌がっててもコイツは帰る場所があるんだ。」
探偵さんが無理やりミルを抱き上げる。
嫌がって腕の中で暴れるのにそんなの無視されてしまう。
大きな声は聞こえなくて小さく助けて助けてって鳴くのに、探偵さんは慰めてすらくれない。
そんなの悲しい。
「嫌なのに、帰らなきゃいけないの?」
「飼い主がいるからな。」
「…その子きっと飼い主さんに酷いことされてるよ。よく見て、痩せてて毛並みだって悪くて。」
「だとしても、コイツが帰るとこはここじゃなくて飼い主の場所だ。」
「傷つけられてるかもしれないのに帰さなきゃいけないの…?どうして、そんなの酷いよ。」
「ポチ。」
探偵さんが低い声で一度名前を呼ぶ。
目が怖くて、きっと怒ってる。
腕の中のミルがジタバタして必死に逃げようとしてる。
助けてあげたいのに、怖くて動けない。
「…ごめんなさい。」
「お前はここにいろ。」
それだけ言われて探偵さんは玄関へ向かってしまう。
ミルの鳴き声が遠くで聞こえて、捻り出すような悲鳴みたいだった。
ごめんね、俺なんにもしてあげられなかった。
きっとミルは一生懸命『助けて』を言ってくれたのに。
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