アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9
-
依頼者さんが帰ってから、探偵さんと話したくなくてずっと玄関であんこを撫でていた。
この子はちゃんと愛されてるのかな。
綺麗な毛、綺麗な目、それに健康的な体。
きっとこの子は大丈夫なんだ。
「あんこ、早くお家に帰れるといいね。」
撫でながらそう言うとニャア、と一度鳴いてくれる。
きっと飼い主さんが大好きなんだろうな。
迷子になって知らない家に連れてこられて不安じゃないかな。
「…ポチ、今日は出前でも取るか?」
しばらく撫でていたら、廊下からそんな声が聞こえた。
…そっか、俺が作らなきゃご飯はないんだ。
今日は冷やし中華を作るって朝にお話してたのにすっかり忘れてた。
材料はあるからすぐに作れる。
でも、…ミルの事を思い出すといつもみたいに探偵さんと話せない。
「あの猫の事、怒ってるか。」
「…ううん。」
「そっちに行ってもいいか?」
「うん。」
なんだかバツが悪そうにそう言って探偵さんがそばまで来てくれる。
しゃがんで俺と同じ目線になると、優しく俺の髪に触れた。
「あの猫は、…多分虐待されてる。何度か依頼されてるが怪我がある時だってあった。それでもあの家に帰さないといけないんだ。」
「…どうして?」
「あの猫は飼い猫で、飼われなきゃ死ぬかもしれない。それにここにずっと置いておくことも出来ないんだ。…それはどんなに足掻いてもあの猫はあの依頼者の物だからだ。」
「猫は物じゃないよ。」
「お前はわからないかもしれないが、法律でそうなってるんだ。」
「…法律?」
「…偉い人が決めた約束だ。破ったら罰を受けなきゃいけない。」
一つ一つ言い聞かせるように俺に教えてくれる。
それでもどうしても納得できなくて。
我が侭だってわかってる、困らせてるってわかってる。
…でも、それでも。
「それじゃミルはずっと…辛くても逃げられないの?」
探偵さんの顔つきが変わる。
俺は 悪いことを聞いたのかもしれない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 149