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ポチがいくつも質問を投げかけてくる。
そんなの、俺だってわかってる。
でも世間にはそんな屁理屈は通用しない。
言いくるめてしまおうとしていた時、ポチの言葉に思考が止まった
「それじゃミルはずっと…辛くても逃げられないの?」
思わず顔を歪めてしまう。
辛くて、逃げ出す。
あの猫は限界を迎えて逃げ出しては人に助けを求めてくる。
俺はそこを捕まえて何度もまた飼い主へ返してきた。
今目の前にいるポチは。
あの環境から逃げ出してきて、あそこで助けられるのを待っていたんじゃないか。
「…探偵さん?」
今ここで
『そうだ、逃げられない。』と言ったしまったら記憶が無いとはいえポチの存在や意思を否定してしまうことになるかもしれない。
「あぁ、…辛くても…」
「ごめんなさい、…探偵さんを責めたってどうにもならないのに。」
「…いや、そうじゃ…なくて。」
どう答えればいい?
猫は逃げられないと言えばいい?
…そう言えば何なら逃げていいのか、なんて聞かれるかもしれない。
人探しの依頼は断れるのに猫探しは断れないなんてのもおかしな話だ。
それなら俺がこいつにいう言葉は一つだけだ。
「ポチ。…ごめんな、俺の力不足だ。俺には動物を救えるほど力がない。」
「ううん、…俺も酷い事言ってごめんなさい。」
「だが次に同じ依頼が来たら動物愛護団体へ相談してみることにする。動物愛護団体は…そうだな、あの猫に優しくしてくれる人達だ。」
「本当…!?それなら安心だね。」
「あぁ。なぁポチ。猫は守れなかったが…」
きっとポチがこんなに不安そうに何度も問いただして来た理由も、辛そうにしていた理由も。
記憶がなくたってどこかで自分と猫を重ねていたからじゃないだろうか。
…だから。
「お前の事は守ってやる。」
「…本当?」
「あぁ。…絶対だ。」
「ありがとう、っ…俺、今の言葉忘れないよ。」
しょんぼりしていたポチが少し笑顔でそう言った。
絶対、なんて簡単に使っていい言葉じゃないのは知っている。
それでもコイツだけは 絶対に守りたいとそう思ったんだ。
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