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不穏
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なんとかポチを風呂へ入れ、髪を乾かす前に要へ電話をかける。
1日に今しか時間が無いんだから一秒でも惜しい。
『…君、僕が寝てる時間に電話をかけるのが趣味なの?』
「寝るの早すぎだろ。」
『僕は夜行性なの、そろそろ起きようとしてたんだけどね。…で、何の用?』
「何の用?じゃない。アイツのことだ。」
『…君がそんなに人に干渉するなんて珍しいね。いつも面倒だって切り捨てるくせに。』
「うるさい。時間が無いんだ、早くしろ。」
『急かしたってそんなに情報はないよ、まだ調べきれてないからね。』
電話の向こうの要がはぁ、と大きくため息をつく。
こんな時に限ってこいつは仕事が遅い。
どうでもいい仕事はすぐに調べ終えるくせに。
「なんでもいい。」
『…そうだね、思ったより"ソレ"面倒だよ。ただの落とし物じゃないらしい。』
「どういう意味だ?」
『危ないお店の所有物が最近逃げ出したらしいよ。僕も詳しくはわかんないけどね。…ただ一つわかってるのがもうソレの居場所が特定されてるってこと。』
「待て、その逃げ出したのがポチってことか…?」
『おみごと。』
楽しそうな笑い声が頭に反響する。
訳あり、だと言うのはわかっていたが危ない店ってどういう事だ?
何かから逃げ出した…
あの日、ポチの服に付いていた血。
体のあちこちに残る痣や火傷のあと。
…アイツは虐待なんかじゃなくて商売道具にされてたってことか。
「その店の詳細は?」
『聞いてた?居場所は特定されてる。君の家や活動範囲だって特定されてる可能性が高いんだ。…迂闊な行動は避けるべきだよ。』
「…ただ見てろってことか?」
『僕の仕事はここまでさ、これ以上はお人好しで踏み込める範囲じゃないからね。僕だって危険にさらされるかもしれない。』
「わかった、…また改めて連絡する。」
『うん、待ってるよ。』
電話を切り携帯をソファへ投げ出す。
どうなってるんだ。
ポチを守るためには…どうしたら…
今のこの瞬間も、誰かがポチを捕らえようとしてる…?
先の見えない不安に襲われたまま、何も出来ない自分に腹が立った。
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