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パソコンで要に貰ったデータと地図を照らし合わせ、どう救出に行くかを考えていた。
3人で行くとしてもこういう所の警備は恐ろしいだろう。
客として入っても…いや、ポチは置いていくべきか?
外が夕焼けになった頃傍に置いたままだった携帯が鳴った。
「…どうした?」
『ユキ君。』
「なんだ。」
『ねぇ、ユキ君。』
「…だからどうした。」
『高校三年の、屋上でした話覚えてる?』
急な切り出しに顔を顰める。
高校三年の屋上でした話?
俺達はほぼ毎日屋上で飯を食ってたせいで、どの話かなんてわからない。
だが、要がこのトーンで切り出すことと言ったら
「この仕事に就くって話か。」
『うん。君は自分の記憶を探すって言ったけど…結局まだでしょ?』
「まぁそうだな。そんなに困ってもない、それに今は他の仕事が…」
『そうだね。君は、本当に自分の過去を知りたい?孤児院に入らないといけないような過去を。』
「…どうしたんだ急に。ポチはどうした?」
『今はお風呂だよ。いや、なんとなく。…ちょっとね。知らなくてもいい過去ならもう知るのはやめて置かない?僕は君と僕の今のこの環境と世界が好きなんだ。』
要はそう言うと、ふぅと息を吐いた。
ため息かもしれない。
要は時々深刻そうに何かをいう。
考え込んだような事を。
俺はそれを今まで何度も見てきたが、全て正しい事だった。
だからこれも。
「なぁ、要。お前は……お前自身の過去なら、記憶が無くなった方がいいと思うか?」
『そう…だね。僕の最初の記憶が君との出会いならきっとすごく幸せだった。』
「…要、……」
『なーんてね!君は僕にとって唯一の友達で親友ってだけさ。それじゃ、切る……』
「要。」
小さい頃、俺のことを五月蝿いほど『ユキ君』と呼んできたコイツは大人になるにつれ名前を呼ぶのをやめた。
それが何故なのか今も俺にはわからない。
だが。
「名前、呼んでくれ。」
『…ユキ君。』
「ありがとう、それが唯一の記憶なんだ。」
『そう。僕も君の記憶探しを……わ、ポチ君!?お風呂から出たらちゃんと髪を拭かないと駄目…あああ頭振らないで、ぬいぐるみ達が…!!』
ガチャン、と受話器を置く音が聞こえて電話が切れた。
…一体どういう状態なんだ。
携帯を机の上に置いて大きく伸びをする。
要。
要のことを 俺は救えるだろうか。
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