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あの日の屋上で。
俺は初めて、要の過去を知ることになった。
*
要が包帯を顔に巻き直しながら、少し澄まして笑った。
昔から聞かないでいたこと。
聞くなら今しかタイミングがないような気がした。
「なぁ、要はなんで…孤児になったんだ?」
「うーん…どこから話せばいいかなぁ。」
「…悪い、言いたくないよな。」
「どうだろう。でも、ユキ君には少し知ってて欲しいかも。」
「…なんだそれ。」
要は巻き終えた包帯を後ろで括ると楽しそうに笑った。
一緒に持ってきていたリュックを抱きしめてうーん、と悩み込むように言うと人差し指を立てて
「それなら全部話しちゃおう。」
なんて言って笑う。
要はいつだって楽しそうだけど、俺はコイツの事は何も知らない。
名前と出会ってから起きたことくらいしか。
それは俺が聞かなくてコイツが言わなかったからだけれど、2人の中でそれが暗黙の了解みたいになっていたからだ。
それが今、小さなきっかけで壊れた。
「僕がまだ6歳の頃に、家にお巡りさんが来たのさ。僕はまだよく分からなかったけどその話によると僕の父親は殺人犯だったらしくてね。」
「殺人犯…?」
「うん。3人殺したって。指名手配犯で全国に実名で張り出された。毎日家には知らない人が来て僕らを責めるし父親は見つからないし。母親はショックで風呂場で自殺して僕は一人ぼっちってこと。」
俺が何も言えずに固まっていると要は変わらない笑顔でそのまま続けた。
「僕はそのまま地元の孤児院で暮らしてたんだけど、当たり前にみんな僕を嫌うし子供って残酷でやる事もえげつなくて。その果てに塩酸かけられて…それが原因で引っ越し、本当は追い出されたんだけどね。
それで唯一引き取ってくれたのが君と同じ所。」
「…要、…っ…悪い、俺…知らなかった。そんな事何も知らずに…」
「いいんだよ。ユキ君に出会えたんだから、他にもう何もいらないよ。顔が半分無くたって生きていける。そうでしょ?」
楽しそうに笑って俺の髪に触れる要は誰よりも優しい顔をしていた。
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