アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
■上層役人×男娼
-
「お客さん……また来たの?」
きらびやかな着物に身を包んで.
チラッと垣間見える足。はだけた肩はもう次のお客さんがくるから面倒でそのままにしている。
江戸の時代
・・そう生まれた年が悪かった。こんな遊廓で身を売る生活、まっぴらだけど何で俺が・・・・なんて思ってもしょうがない。そうでもしなきゃ食っていけない。ここはそういう世の中だから、それだけ。もうここから出て生きていける方法なんて、俺には残ってない。
何人ものおっさんに抱かれて、純情な気持ちなんてどこかへ行ってしまった。
でも今来た客だけは、俺とセックスしないで話だけして帰っていく。意味が分からない。変人って言う形容詞が一番似合う人だった。
しっかり整えられた黒髪。腕に付いた紋章が、どこか偉い位の人だと告げている。
「やだな、一応お客なんだから外見上だけでも喜んでもらわないとなあ・・」
「前そうやったら、そんな真似俺にはしなくていい、って言ったくせに」
「あれ、そうだったっけ?」
おどけた調子で聞いてくるのが、余計に腹立つ。眉に力が入った俺の顔を見て今度は腹を抱えて笑い出した。・・失礼な男だな!!!
「お客さん。冷やかしなら、他を当たってよ」
「・・・・本当に、帰っていいの?今日はお土産あるのになあ・・」
「お土産?お菓子?」
前にもらったカステラが無性に美味しかったのを憶えていて、涎が出そうになる。
「あはは!残念ながら、今日は食べ物じゃないよ」
「じゃあ、いらない」
「ちょっとちょっと!ひどいなあ、おじさん頑張ってきたのに・・」
おじさんって年でもないだろ、見た目20代じゃないか。
「はいはい、拗ねないでお客さん。あんたは俺の常連さんだからね。」
「ふっふっ・・そうだよ?常連さんだもんね・・」
「いいから、早く頂戴。」
「も~、もっと雰囲気出してもらわないと・・。だって、今日誕生日なんでしょ?」
・・・・誕生日?そんな単語久しぶりに聞いた。
「・・・、・・今日何日?」
「3月、22日・・当たりでしょ?」
「え・・・・、まあ、当たりだけど・・」
何でそんなこと知ってるの遊廓に来てから一度も言ったことないのに、顔に出ていたのか、にっこり微笑まれる。
「おじさん魔法使いだからねえ、ほら誕生日プレゼントだよ、開けて?」
装飾の付いた封筒みたいなものを渡される。このご時世、こんな小さなものですら相当高価なのに、この人。一体何者なんだ。
封を取って中を開けると・・。中には三つ折りされた紙が入っていた。
「・・・・俺の、買い取り書・・?は?あんたが?」
「そうだよ?ここから・・・・出たいんでしょう?」
呆気に取られて開いた口が塞がらない。
「・・・・いや!無理だよ、俺すごい借金付いてるんだ。いくらあんただって・・・・」
今までも俺を買い取ろうとする奴はいたけど、その借金の金額を聞いて皆、首を振って諦めていったんだから。
「うーんと。ほら下の方、読んでごらん。」
「下?・・・・・・借金全額・・返済、・・済み?は?!」
「ちょっと手間取っちゃったけど、今日でちゃんと払い終えたよ、君の借金は・・全額。」
「・・・・あ。・・、あ、ありがとう・・」
頭が付いていかない。あの多大な借金を全額?口元が震えて舌が上手く動かない。
「そんな言葉が聞きたいわけじゃないんだよ、俺はね。・・・・ねえ、ここを出て・・おじさんと一緒に暮らしてくれないかな」
手を握られて、目を凝視される。だってこの買い取り書があるってことは少なくとも今の俺の所有権は目の前のこの人になるわけだ。そんなこと聞かなくたって。俺は今あんたのものなんだよ。
「本当に思ってることが顔に出る子だね。・・・・選んでいい。俺と来てくれなくても君はここから出られる。」
「・・・・そんな・・こと・・」
莫大な借金と俺の買い取り金すべて払っておいて、どこで暮らすか俺に選ばせるっていうのか?・・・・変な奴。本当に変な人だね、あんたは。 目頭が熱くなってきて目から熱い雫がぼたぼたと流れ落ちる。ここに来てから、泣いた事なんて、一度もなかったのに
「・・・・え?ちょ、っと・・なんで、・・泣いちゃうの・・?嫌だった?それとも、おなか?おなかすいたの?」
突然泣き始めた俺に慌てまくる目の前の変人が的外れなことばっかり言って、お腹を撫でてきたり、頭を撫でてきたりで、可笑しくて笑ってしまう。
「はは!・・はは・・。そうだね、お腹・・すいたのかな。ねえ、あんたの家で・・・・カステラ、食べたいな」
お腹を撫で続ける手に自分の手を重ねて、はにかむと珍しいことに目の前にあった顔が一気に真っ赤になった。
「・・え!そ、それって・・・・」
「一緒に連れていって、俺を・・あんたと、一緒に。」
「そ、そっか・・・・、ぁ・・・。あーーー!!もうっ!」
急に叫びだしてぎゅうっと抱きついてくる。それが今までで一番心地よくて、温もりにひどく安心した。首元に擦り付いて抱きしめ返す。・・・・俺に居場所をくれた、人間として生きていける方法を与えてくれた。・・・・それがすごく嬉しくて。
だから
これからも、どこまでもあんたと一緒に。
少し腕をゆるめて、見つめ合って。
どちらからともなく引き寄せられるようにキスをした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 5