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「ん……」
あ…俺また眠って…
―カシャ―
突然近くでシャッター音が聞こえて、恐る恐る目を開けると…
ぼやける視界の先には俺が座る席の前の席に、俺の方を向いて座わり、携帯電話を片手に、ニコリと微笑む多賀さんの姿があった。
「おはよう晴紀くん」
「え…あ…多賀さん??今もしかして写真撮って…」
「あぁコレ?うん、撮ったよ」
撮ったよって…
「俺の寝顔なんか撮ってどうするんですか??///」
「いつでも見られるかなーと思って。コレ待受にしてもいい?」
そう言いながら多賀さんは、その写真が表示された携帯画面を俺に見せた。
一瞬にして俺の顔が、ボッと赤く変わる…
「だ…ダメです!早く消して下さ…」
俺が慌てて携帯を奪おうとすると、多賀さんは携帯のボタンを押した。
「あ…ごめん、もう保存しちゃった」
そう、いたずらっ子の様に笑う多賀さんにトクンと胸が跳ねて…
「多賀さん…」
見とれてしまって何も出来ず、奪おうと上げた手を降ろした。
「……」
「……」
一瞬変な間が空いて…
「ぷ…あははは」
「ははは」
お互い、顔を見合わせて笑った。
「久し振りだね、どうしたの?こんな所まで」
「お…お久し振りです。あの、水崎町って初めて来ました。ここってどの辺りなんですか?」
俺は外を景色をキョロキョロと見ながらそう言った。
「え?晴紀くん知らないで乗ってたの?」
「はい…」
「じゃあどうしてこのバスに?」
それは…
「バス停で、バスを待ってたら多賀さんの声が聞こえて来て、そしたら無性に多賀さんのバスに乗りたくなっちゃって…」
気付いたらこんな所にいた…
「それって、俺に会いたかったって事?」
う…まぁ総合すると、そうなっちゃうんだけど改めてそう言われると、もの凄く恥かしい…
俺は返事に困って、コクリと小さく頷いた。
「俺もね、路線が変わっても無意識のうちにバス停に晴紀くんの姿探したり、いつものあの席をミラー越しについ癖で見ちゃったり…あぁ、俺晴紀くんに会いたいんだなーって、最近気付いたんだ」
嬉しい…多賀さんも、俺に会いたいって思っててくれて。
今なら言えるかもしれない、俺の気持ち…
「あの…」
「あ…もうこんな時間か、そろそろ次の出発の準備しないと…じゃあ、このバスUターンして同じ道辿って行くだけだからバスセンターまで送ってあげるね」
多賀さんは腕時計を見ると、残念そうにそう言って立ち上がった。
このままじゃまたこの前と同じになってしまう…そんなの嫌だ。
「あ…あの!!」
俺は慌てて多賀さんの腕を掴んだ。
「ん?」
「好きです」
多賀さんは驚いて、一瞬視線を止めた後、何か思い出した様に「あぁ」と、言って…
「声が?」
確かに前に多賀さんには、そう言ったけど…違う、今の‘好き,はそんなんじゃない。
「違います…多賀さんの事が、好きなんです」
とうとう言ってしまった。
多賀さんの返事を聞くのが怖くて、俺が真っ赤な顔で俯いたままでいると…
「俺も好きだよ」
頭上から多賀さんの優しい声が降って来た。
え…?…まさか…俺、からかわれてる?
「寝顔が…ですか?」
不安になって、そう聞き返すと多賀さんは小さく首を横に振って…
「ちゃんと、晴紀くんの事が好きだよ」
うそ…うそ…
「夢じゃ…ないですよね?」
「ほっぺた抓ってあげようか?」
多賀さんの指先が俺の頬に辿り着いて、ギュッと抓られた。
「痛たたたた!!…っ…夢じゃないみたいです」
俺は、痛みの残る頬を手で擦りながら、そう言った。
「すごいね…俺達、両思いだ」
「はい…」
ヤバい。嬉しすぎて泣きそう。
みるみるうちに瞳に涙が溜まって行く…
「あ…ごめん、そんなに痛かった??」
抓った頬が痛くて泣いたんだと思ったのか、多賀さんは慌てて子どもをあやす様に俺の頭を撫でた。
「ち、違います…嬉しくて」
「でも、抓った所赤くなってる…」
多賀さんは不意に帽子を取って、俺の頬に顔を寄せると…
―チュッ―
頬に柔らかな感触がして、すぐに離れて行った。
今…多賀さんの唇が…俺のほっぺたに…くっついて…
チュッて、ほっぺたにチュッて…
「た…た…た…多賀さん!!///」
「さてと…出発いたしまーす」
多賀さんは誤魔化す様にそう言うと、帽子を被り直し運転席へと向かった。
俺は、多賀さんの唇の感触の残る頬を触りながら、その後ろ姿を見つめる。
「多賀さん」
俺はいつもの席に座わり直して、名前を呼んだ。
「んー?」
「また多賀さんのバスに乗りに来てもいいですか?」
「勿論いいけど…」
「けど?」
俺は不安になってそう聞き返した。
「わざわざバスに乗らなくても、隣りで運転してあげるのに」
「え?」
「とりあえず、今度休みの日にどっか連れて行ってあげる」
多賀さんはそう言いながら、ミラー越しに微笑んだ。
「はい…///」
バスが走り出す。
窓の外にはキレイな夕日が広がっていて…
真っ赤に染まった俺の頬を、そっと隠してくれた。
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