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(そりゃ、そんな顔になるよな‥…)
だって寿がタキを抱き締めているのだから…。
寿はいい気味だ、と思いながらもずっとこうしている訳もいかない…。
寿は内心でため息をついてから、腕からタキを離して皇子の前に行く。
「ノックしたものの返事がなかったので、ドアを開けさせてもらいました」
隣国の従者は驚いた表情もせずに淡々と述べる。
「そうか」
寿が従者にそう答えるが、寿の視線は皇子を見つめたまま。
寿は皇子に挨拶するために膝を折ろうとした時、皇子が止めた。
「膝はつかなくていい。同じ視線で喋りたいからな」
同じ視線といっても、寿が少し首を上げる形になる。
「俺が隣国の皇子、チグサだ」
(……、俺が隣国の皇子…、か…)
堂々と自分の身分を語れることに、寿は特に何も思わない。
それが羨ましいなんて思ってしまえば、自分の流れている血を卑下することになるから…。
寿は皇子に内心を悟られないように、眉間に皺を寄せたままでにっこり笑う。
「私は…、」
「知っている。寿だろう」
皇子がふんわり笑って両手を広げる。
(あ…)
気付けば、寿は皇子の腕の中にいた。
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