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『寿、綺麗な色でしょう!金色っていうのよ。私の祖国では金っていうのがいっぱい取れるのよ?これは本物の金じゃないけど、鶴を折りましょう!ちょっと難しいけど寿になら出来るわ!』
「寿になら出来るわ、が口癖だったな…」
胸がチクンと痛くなる。
でも泣きはしない…。
泣くことは弱いから…。
弱い自分をあの人は望んでいないから…。
(本当に愛していたんだ…)
寿は小さく笑って折り鶴にキスをして、ポケットに入れる。
寿は天井を見上げてから大きく息を吐いた。
寿は勢いをつけて起き上がる。
そしてもう一度部屋の中を見る。
今はベッドしかないがクローゼットやテーブルの配置、布団の色まで鮮明に覚えている。
もうこの部屋に来ることはない…。
二度とこの城には戻れないから…。
何があってもこの国には帰ってきてはいけない…。
国王である父に迷惑を掛けるようなことは絶対にしてはいけない。
それが国を出ていく者の暗黙の掟…。
「安心して…。俺は何があっても生きるから」
寿は誰もいないこの部屋で語り掛けるように言った。
そして寿はそのまま部屋を出てドアをゆっくりと閉めた。
「ありがとう、お母さん…」
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