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「俺はあの城で寿は孤独で自由がないから、あんなにも表情をなくしたのだとばかり思っていた」
寿が首を傾げる。
皇子が何を言っているのかわからない…。
「…違ったのだな。寿は孤独じゃなかった…。不自由はあったかもしれないが、寿を本当に愛してくれる人がいた。その人を失ったから寿はあんなにも表情をなくしたのだな…」
皇子が言う寿を本当に愛してくれる人とは、母のことだ…。
なぜ皇子がそのことを知っているのだろう。
それもタキが喋ったのだろうか…。
でもなぜか皇子がその場にいて、当時の寿を見ていたかのような言い方だ…。
「‥俺が寿を傷付けた」
「え…?」
思いもよらない皇子の言葉。
「それでも…、」
皇子が寿の眉間に指を当てる。
「俺の傍で、寿の本当の笑顔を取り戻してほしいから」
寿は皇子のその言葉にものすごく困惑する。
「……、俺、笑えているだろう…?」
皇子はじっと寿を見つめたまま。
その視線の強さに自分の中にある弱さを見透かされそうで、寿は恐怖を覚え始める。
「ああ。あの頃よりは表情がある」
あの頃よりは、ということは自分はまだちゃんと笑えてないのだろうか…?
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