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タキにすべてを隠そうとしても無駄かもしれない。
きっと今日の寿の顔色を見れば、昨夜寿があまり眠れていない事もタキにはわかっているだろう。
タキはそれを口にしないだけだ…。
最近になって寿はようやくわかってきた。
寿から発するまで、タキは何も言わない。
カーテンを縫い終わってミシンを止めるが、寿はその場から動こうとはしない。
それをタキは咎めないし、タキから声を掛けることもしない。
タキはじっと待つだけだ。
寿から発するのをタキはただじっと待つだけだ…。
「……。…タキ」
発した声音は寿が自分でも驚くぐらい固いものだった。
「はい」
そんな寿に対して、タキはいつも通りだ。
「…俺は、何しにここの城に来たんだ…?」
なぜ皇子の言葉であんなにも胸が痛んだのか…。
出来たら気付きたくないままでいたかった。
だけど本当は寿が一番よくわかっている…。
皇子に自分を拒否されたから…。
俺にはお前のことは必要ない、って言われたみたいですごく嫌で、だからあんなにも自分の胸が痛んだ。
「…俺はちゃんと笑えてないのか‥?」
寿がそう言うと、タキは真っ直ぐに寿を見据える。
「寿様…、」
タキは頬を緩ませて優しく微笑む。
「本当の笑みは、本当に愛する人に見せれば良いのです」
「え?」
思いもよらない言葉に寿は首を傾げる。
「本当の笑みというものは、寿様が愛した人に一番に見せれば良いのです。…そして二番目にこのタキに本当の笑顔を見せて頂いたら光栄でございます。だから何も焦りはいりませんよ?」
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