アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
65
-
それは自分はやっぱりちゃんと笑えてないということ…。
それでもタキの言葉が寿の胸に響いて、スッと胸の中に落ちていく。
「私はどんな笑みでも、寿様が笑って下さるだけで嬉しいのです」
「タキ‥」
寿が表情をなくした時を知っているタキだからこそ出る言葉。
「皇子が寿様に何と仰ったかわかりませんが、寿様のお気持ちを考えすぎたのでしょう」
「…え?」
「いいですか、寿様?一番大切なのは、寿様のお気持ちです」
タキはニコッと笑う。
「皇子は寿様にご自分のお気持ちをお伝え下さいました」
タキは笑みを崩さず優しく言う。
「皇子のそのお気持ちに、寿様が応えるかどうかは寿様次第です。寿様の中でお答えが出るまで、ここにいればいいのです。皇子がここにいろ、と仰っているのですから。寿様のお答えが無理なら無理というお答えでいいのです」
「タキ…」
「皇子のお傍にいて、いつか皇子のことを好きになったのなら、それを皇子にお伝えしたらいいのです。皇子も好き勝手しているのですから、寿様も考え過ぎずに焦らずに、皇子がここにいろと言っているのだから、ここでの生活を目一杯満喫してやろう!というぐらいのお気持ちで過ごしたらいいのですよ」
タキの言葉でずっと寿の胸につっかえていたものが取れたような気がする。
無意識に深く考え過ぎて、焦って無理にでも答えを出そうとしてしたのかもしれない…。
きっと自分の中の答えは案外単純で、そして答えを出すのはもう少し先でもいい…、ということなのかもしれない…。
「ああ…。そうだな!」
寿は眉間に皺を寄せて笑って、小さく頷いた。
「タキ、ありがとう!!」
寿がそうお礼を言うと、タキも優しく微笑んでくれて、しばらく二人で笑いあったのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
105 / 246