アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
96
-
寿は皇子が手当てくれているのを黙って見守るだけだ。
だからといって今、部屋に宿っている沈黙が嫌な訳じゃない。
沈黙でも皇子といるとなぜか落ち着く。
「これで大丈夫だ…」
「ありがとう」
寿は軽く足を動かしてみるが、さっきよりも痛みがない。
でもこれから三日間も庭で遊べないと思うと、少し憂鬱になる。
「チェスでもするか?」
寿の心を読んだかように皇子は聞いてくる。
「え?」
「待っていてくれ、持ってくる」
「いや、でも…!」
「俺がしたいから持ってくるのだ。待っていてくれ」
さっき遊びたい時はそう言えばいい、と寿が皇子にそう言った。
(けど…、)
寿が気を遣わないように、俺がしたい、と言ってくれた皇子の言葉が嬉しくて…。
「あの…、待って!」
「なんだ?」
「…ありがとう」
寿がポツリと言うと、何に対してのありがとう、が皇子には伝わったのだろう。
皇子はニッコリと微笑んで、ああ、すぐにチェスを持ってくる、と言って部屋を出る。
寿は心の中に何か温かいものが広がって、眉間に皺を寄せながらも笑顔になっていることに寿自身も気付いていなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
136 / 246