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「お母様がご体調を崩されても、寿様は涙はお見せにはなりませんでした。ずっと私には笑顔をお見せになっていました」
皇子はやっぱりな…、と思った。
じゃないと昨日、寿の口からあんな言葉が出てくるはずがない…。
だけど、そんな幼い時にどうにか正気に保つために辛さを隠して笑っていたなんて…。
皇子の胸がギュッと痛む。
「…それから三ヶ月後、お母様は逝去されました。その時も寿様は涙はお見せにならずに、ただご立派にお母様をお見送りしました」
その時ばかりはじぃやを呼び、寿とタキの三人で静かにお見送った。
「お母様が逝去された後も、いつもと変わらない生活をしていましたが、寿様から段々と笑顔がなくなり一点だけを見つめる時間が多くなりました。…そして笑顔だけはなく、表情もなくなっていきました。…ついには私が話しかけても寿様からの返答はなくなりました」
タキが息を吐く。
喋っていると当時の寿を思い出してしまう…。
寿の変化を間近で見ていたタキの胸は締め付けられる思いで毎日を過ごしていた。
「寿様は表情をなくしてから、黙々と折り紙でお母様に教わった鶴を折ることが多くなりました」
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