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これが本当に正しいやり方なのか、神童と呼ばれた男もさすがに迷った。
タキはその迷いを無理やり消すしかなかった。
タキが迷っていればすぐに寿は悟るだろう。
寿は人の気持ちには敏感だから…。
自分が迷えば、余計に寿の心を曇らせてしまう。
だからタキも本当に懸命だった。
「なんて格好いいことを言ってしまいましたが、本当は心配で堪らなくて、毎晩寿様が寝静まった頃を見計らって、こっそりと寿様の寝顔を見に行っておりました」
タキが小さく笑った。
「毎晩寿様はうなされていましたが、それでも涙を流すことも、涙が流れた跡はございませんでした…。私は今までこれほど我慢強い人間は見たことありません…」
タキは視線を上に向ける。
「…それだけ寿様がお母様を愛していた…、と言えるかもしれません…」
タキは上に向けた視線を、再び皇子に視線を戻した。
「それからほんの少しずつ寿様はご自分で表情を取り戻していきました。寿が私の言葉に、一言、二言、返答してくれるようになりました。今や寿様は色々と私に相談をしてくれるようにもなりましたが、それには長い長い年月掛かりました。それを経て、今の寿様がいらっしゃいます」
皇子、とタキは続ける。
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