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Ⅰ
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「……よく、聞いてくださいね」
何故か一人、政府の研究機関から呼び出された俺は、二年前に受けた第二の性検査結果を研究機関の一室で聞いていた。
俺はオメガだ。アルファとオメガの両親だし。俺には得意な事も、誰かを引っ張るってのも苦手だったから、ベータか最悪オメガだろうなと思っていた。
だが、いまだに俺にはヒートが来ない。二年経った今ですら、ヒートはない。今の俺はベータと何ら変わりなかった。
「君の運命の相手だけれど」
研究員の女性が下を向いた。他の人達も何だか震えている。泣きそうな顔をしている人までいた。
俺の運命の相手は、そんなに酷い人なのか?犯罪者?
そう思いながら、黙り込んでしまった女性の言葉の先を待つ。
少しおいて、彼女は俺に言った。
「君の相手は、既に亡くなっていたの」
運命が亡くなっている?そんな事があり得るのか?
俺は混乱した。同時に、少し安心した。運命の相手がいないという事はまたしばらくベータと変わりなく過ごせるはずだ。劣等種だなんて言われずに済む。
「こんな事、初めてで……ごめんね」
「いえ。それで、俺の相手は?」
俺は興味本位で聞いた。何となく、俺の運命の相手を知りたくなった。俺の相手は、一体誰だったんだろう。酷い相手だったなら、死んでくれてよかったのかもしれない。
泣き出した女性の代わりに、傍にいた白衣の男性が俺に言った。
「君の相手は、織部 静(おりべ しずか)。知っているね?」
目をいっぱいに見開いた。口が開いて震える。知らないはずがない。
彼はテレビに出ているような有名人だ。数年前に事故で亡くなったとニュースで流れた。
俺は男ながらに、あの人が好きだった。綺麗な顔と、その低い声が好きだった。
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