アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
27(蘇芳)
-
※かなり短めです。
暗い静けさの中、俺は長い廊下を歩いていた。
手に持ったガラスの小さなランプの中では、薄緑の光苔が淡く光を放っている。
足元を照らすには少々頼りないそれだが、俺は夜目がきくほうなのでなんら問題はなかった。
普段なら火を使うところなのだが、それをしなかったのには理由がある。あれば明るすぎるのだ。
今から向かう場所では少し、、良くない。
長い廊下を歩く事数分。俺は目的の場所に辿りていた。
白い扉のノブに手をかけ慎重に音を立てないよう開けるば、視界にに白い寝台と、小さな机と椅子が入ってきた。
俺は迷わずその白く少し盛り上がった寝台に忍び寄る。
手に持った光苔のランプに布をかけ光を更に落とし、机に乗せた。
淡いが、白い寝台に横になって眠る人物の頬を優しく照らす。
俺はその人物に手を伸ばし、そっと触れた。
「、、、風音。」
熱も下がり寝台で丸くなりながら穏やかな寝息を立てている風音。
頬に軽くかかったその長く美しい髪をサラリと指先ではらう。
正直、あんな無様な交わりは初めてだった。
おのれが夢中になりすぎて軽く我を忘れるなど今までなかった事だ。
今までは人魚だろうが人間だろうが逆に夢中にさせてきたというのに。
泣いた顔も、悪態を吐く唇も、指先に絡む髪さえも全てが俺を激しく高ぶらせた。
思い出すだけでも、みずからの吐く息に熱がこもるのがわかる。
「 風音、、、、。」
「 んぅ、、、、。」
もう一度名前を読んで頭を撫でれば、風音は小さく身じろぎをした。
起こしたかと一瞬焦ったが、どうやらただ身じろいだだけのようでホッと胸をなでおろす。
(、、、焦る?この俺が?たかが人間の睡眠を邪魔しそうになっただけで、、?)
俺はもう一度風音を見下ろした。
どこにでもいる普通の人間だ。ただ、少し珍しい色をしているだけ、、それだけである。むしろ痩せているぶん他より貧相だというのに、、なぜ、、、。
( 何故コイツはこうも俺の心を乱す、、、。)
蘇芳はぐっと眉間にシワを寄せると、机の上の光苔のランプを手に取った。
足をとを立てないよう注意をしながら扉から外に出る。
扉を背に寄りかかり深い溜息を吐いた蘇芳は、眉間のシワをそのままに、真っ暗な廊下へと消えていった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 32