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【65】
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時間が経つのは早く、(藍川さんが1番楽しんでいた)仏像見学が終わると宿泊するホテルに移動し夕飯の時間となった。
「風呂は部屋についているシャワーを使うこと。もしわからないことがあったらすぐに先生らを呼べ。そしてしおりに書いてあるように21時には消灯だ。くれぐれも遅れたりハメを外し過ぎて周りに迷惑をかけるなんてことはするなよ。宿泊してるのはこの学校の生徒だけじゃないからな」
夕食後クラス全体で先生からそう強く念を押され解散となった。
***
だが実際はハメを外す程の時間も残されていなかった。
「うわ、もう21時じゃん!確か先生ら見回りくるんだろ?」
「ああ、確かしおりにも見回りありって書いてあったな」
「まじかよー……荷物整理して風呂入っただけでなーんも遊ぶ時間なかったじゃん!」
つまんねーと騒ぐタクヤの気持ちは痛いほどわかり、確かになあ……と同意する。
(俺も別室の木月とは2人っきりで話せる時間全くなかったし……)
「ホテルに来るまでの道も混んでて予定より到着遅れたんだし、仕方ねえよ」
ぶつぶつ文句を言う俺らにそう冷静に言ったのは同室のトワだった。
トワとは今までそんなに喋ったこともなかったが同室になったのを機に仲良くなった。
そんなにはしゃぐタイプにも見えないしこんな時でも落ち着いてんだなあと感心したが、タクヤは「そんなクールぶってるけどお前が石園さんとこっそりふたりでさっきまでひとけが無いところにいたの知ってるんだからな!」とむっとした表情でトワに言い返した。
「…………………っ!」
事実だったのかタクヤの言葉にトワの顔が真っ赤に染まる。
「………石園さん?ってうちのクラスの?」
石園さんはうちのクラスで唯一生徒会に入っている、あまり男子と話しているところを見かけない静かな女子だった。
意外な名前に思わず俺も「え、石園さんと付き合ってんの?」とトワに聞いてしまった。
「………いや、うんまあ……付き合ってるっていうか………数日前に告白されて承諾したっていうか……」
ぼそっと言うトワに「それを世間一般じゃ付き合ってるって言うんだよ!」とタクヤがツッコミを入れる。
「どうせ2人きりの時なんかはお互い名前呼びしてイチャコラしてるんだろ……チッリア充が……!俺も藍川さんにタクヤ♡とか呼ばれてー!」
タクヤの叫びに、最後に至ってはただの願望じゃん……と呆れたがふと名前呼びという言葉に引っかかった。
(あれ……?よく考えたら俺と木月っていつまで苗字呼びしてんだ……?)
付き合って数ヶ月経つがよく考えたら下の名前を呼ばれたこともないし呼んだこともない。
「なあ、響もそう思わねえ!?」
「え、あっ……ごめん、聞いてなかった……何?」
「だからトワがーーー」
一度気になりだすとずっと名前呼びのことが頭の中をしめてしまい、タクヤとトワの話はそのあとはあまり頭に入ってこなかった。
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