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【69】
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翌朝、荷物を持って部屋を出るとタクヤとトワと共に集合場所のロビーに向かう。
「響、昨日ほんと先生らの見回りギリギリに戻ってきたよな。間に合わないんじゃないかって俺とトワめっちゃ冷や冷やしててさー」
あんな時間まで何やってたんだよ、と隣を歩くタクヤが不思議そうに聞いてくる。
「いや……ジュース買ったついでにトイレとか色々行ってたら迷っちゃって……」
かなり苦しい言い訳に、タクヤは「えーでもさー……」と納得していない感じだったが「……まあ結果的に間に合ったんだから良いだろ」とトワが言うとそれもそうか…と言ってそれ以上は追求してこなかった。
「今日は帰るだけだもんなー。意外と短く感じるよな、2泊3日って」
「でもほら、新幹線に乗る前に1回だけお土産買う時間はあるじゃん」
話題が変わったことにほっとしていると「一ノ瀬くん」と後ろから肩を叩かれた。
「これ、バッグから落ちたよ」
そう言いながらバッグに付けていた小さいキーホルダーを渡してくれたのは多田先生だった。
「…………!あ、……」
顔を見た瞬間昨日のヒヤッとした気分が鮮明に蘇りすぐには返事が出来なかった。
「……?違ったかな」
「あ、いえっ……俺のです。ありがとうございます……」
はっと我にかえると、俺の態度に不思議そうな顔をする先生から慌ててキーホルダーを受け取る。
「なら良かった。くれぐれも財布とか貴重品は落とさないようにね」
英語教師であり6組の副担任である多田先生とは授業以外では全く接点がない。
知っていることと言えば20代後半であることと、顔の綺麗さから女子からの人気が高い先生であることくらいだ。
いつも笑顔で怒っているところを見たことがない。
そして今もいつもと同じ態度で接してくれている。
見られたかも、気づかれたかもというのは俺の考えすぎだったかなと思い始め、ありがとうございます、ともう一度礼を言いその場を去ろうとすると
「ーーーーーーあと、場所はもうちょっと選んだほうが良いよ」
多田先生はいつもと違う薄笑いを浮かべて言った。
(…………………………え)
予想外の言葉に俺が驚いて固まっている間に先生は歩いていってしまった。
「えっ今の何?場所って何の話?」
「多田先生と何かあったのか?」
タクヤだけでなくあまり人のことに口を出さないトワまで不思議そうに聞いてきたが俺は何も答えることが出来なかった。
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