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【74】
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「木月くんのどういうところが好きなの?」
「………………優しいとこ……とか……」
「喧嘩したことある?」
「……喧嘩って言うほどの喧嘩はないです」
「家族や友達は知ってるの?」
「まあ……何人かは」
掃除の時間、多田先生は昨日話せなかったからといつも以上に色々聞いてきた。
全ての質問に馬鹿正直に答えるわけにもいかないと思い若干曖昧に答えたが、多田先生は満足そうだった。
「あの、俺も聞いていいですか」
「ん?」
「多田先生って篠原先生と仲が良いんですか?」
昼休みにタクヤと話していて気になったことを軽い気持ちで聞くと、それまで木月とのことを楽しそうに聞いてきた先生の顔から笑顔が消えた。
「なんで?」
「え、いえ………そんな話をちらっと聞いたので……」
聞いちゃまずかったのかなと不安になる。普段ニコニコしている人の真顔はかなり怖い。
「……………………まあ悪くはないよ、仲」
しばらく黙った後そう言った多田先生に怒ってるような様子はなくほっとした。
「どんな話をしたりするんですか?」
「………好きな食べ物の話とか。でも好み全く合わないんだよね。あの人コーヒーが好きらしいけど、僕には理解出来ないし。あんな苦くて不味いのに」
「もしかして昨日のコーヒー味の飴って篠原先生にもらったりしたものだったんですか?」
確か昨日もコーヒー味は嫌いだって言ってたよなと思い出しながら聞くと予想と反して多田先生は「違うよ」と首を横に振った。
「あれは僕が自分で買ったんだよ」
「え、なんで…………?」
「ユウがあの飴はコーヒー嫌いでも食べれるって言───」
そこまで言って多田先生はハッと我に返ったように自分の口元を抑えた。
「…………………?」
ユウって誰?と思ったが俺が口を開くより早く多田先生は「……人に勧められたから買っただけ、失敗だったけど」と誤魔化すように作り笑いを浮かべ「それよりさ、さっきの木月くんとの話なんだけど」と言って話を変えた。
それからはまた質問攻めにあい、もう篠原先生とのことを聞くことは出来なかった。
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