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なつめside
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凍ってしまいそうに寒い冬の日だった。
チャコールグレーのコート、真っ白なマフラーに口元を埋めて燈和がじぃっと見つめている。
家が同じ方面だということくらいは知ってたもののこうして会うのは初めてだった。
バスの停留所。ブレザーの袖に手を潜り込ませて思わず身震いをする。
…。
異様なまでに見られているのを感じて軽くそちらに目を向けるとぱっと目を伏せられて。やっぱり変な奴。無意識に吐いた溜息が目の前を白く曇らせる。バスが来た。
え、あいつ乗らないの?
多少視界の中に入ってしまった以上無視するのも躊躇われて、戸惑いがちにではありつつも奴に声をかける。
「 …、お前乗らないの?」
「…、乗るよ?」
ああ、そう。心の中で頷いて、ほっとく方がいいかもしれない、と思う一方少し絡んでみたいなんていう好奇心が顔を出す。
どうせ、これから15分バスの中で一緒なら無言で気まずくなるのもいいとは言えない。
「とーわ。」
「なに、藍川くん。」
苗字に君付けで呼ばれたのって、初めてかもしれない…。
わかりやすく"自分はあまり君のことが好きじゃないです"というオーラを放ってくる燈和がなんか可笑しかった。
「お前、俺のこと嫌いなの?」
「だから、バス、飛ばそうと…」
「やっぱり乗らないつもりだったわけ。」
「。」
"無言を突き通したいの"、今度はそんな感じだった。また軽く溜息が出た。暖房が暑い。
隣に立つ燈和の頰が少し紅い。
「暑い?」
「うん、暑いね。」
早瀬燈和。綺麗な名前。女子みたいだな。
そんなことを思って、バスを出た。
吐息が白く霞んで消えた。
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