アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
始業式で躓きまして 1
-
市原家の次男として生を受けた。
長男のように期待されることも、末っ子のように甘やかされることもなく、実にいい環境だった。
構われない時間は、知識の詰め込みに費やし、一つの記憶が増えることに喜びを見出だした。
世界が広がるという感覚はない。体験していない身では、知識は頭の中の妄想に過ぎない。
それでも暴食していったのは、“知らない”ということが怖かったからだ。
ものの善悪、ましてや世の中の複雑な構造や人の機微を理解していないのに、知識だけは一人前な俺は相当嫌なガキんちょだったと思う。
そんな俺が今どんな状況にあるかというと、学校の屋上で真っ裸だ。
「俺、芦垣達也。達也って呼んで」
始業式が終わり、HRが始まるまでの間。
前の席に座っていた男子生徒が振り返り、顔を紅潮させながら自己紹介をする。
今時、珍しく友好的な奴だな、と思って見た彼の眼は下心丸出しだった。
「ふーん、達也ね。分かったよ、芦垣君」
「だから、達也だって」
「名前くらい好きに呼ばせて。君の許可なんて知らねぇし」
芦垣君からしたら思わぬ反撃を食らって、言葉も出ないってところなんだろうけど、俺にはとっても好都合。
「『達也でいいよ』『……達也…くん』『だから、達也』。ははっ、少女マンガか。一連の作業、時間の無駄。と、言うわけで名前くらい好きに呼ばせてね、芦垣君」
なんて、やり取りを数人としてしまったので、飽き飽きして屋上でフケてたら、上級生三人に取り囲まれた。
よくある展開で、欠伸が出そう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 125