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蜜と蟷螂 28
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お兄ちゃんと先生は、俺達の後ろに着いた。
先生の手が肩から離れていったことに関しては、お兄ちゃんに感謝だが、落ち着かない状況に変わりはない。
お兄ちゃんが何か言いやしないかと、不安で胸が鳴る。知らずのうちに、ナツの手をギュッと握り締めていた。
「そうかぁ、先生かぁ。スーツなんて……会社員が小学生の肩に手を置いて、何してるんだろうって思っちゃいました。まぁ、指戯れまでしてるなんて、先生でもおかしいですけどね」
「─────!」
「─────!」
お兄ちゃんに、見られてた。
俺はナツの手の中に、絆創膏の貼られた指を隠した。
悪いことした訳でもないのに、疚しい気持ちでいっぱいになる。
言い当てられた先生だって、心穏やかじゃないはずだ。誰かが見ているなんて、思いもしなかっただろう。
それが証拠に、言葉が継げないでいる。
「そういえば、片桐先生ってカマキリに似てますね」
「えっ!? あっ、カ…カマキリですか? あ、名字がですか? か……顔?」
「はは…いえ…、生態というか、職業柄というか…。カマキリって基本肉食なんですけど、本当は花の蜜が甘くて美味しいのを知ってるんです。でも、食べられない、食べることが出来ない」
「…そうなんですか?」
何だかお兄ちゃんは上機嫌で喋っていて、俺は話題が変わったことにホッとした。
何でカマキリなのかは分からないけど、先生も振られた話題に付いていこうと必死だ。
「…あぁ……フフ…なるほどね…」
先生はたっぷりと間を取って、お兄ちゃんに返した。
俺は耳を澄まして、会話を聞いているだけ。お兄ちゃんと先生が、どんな表情で喋っているのかは分からない。
「カマキリにとって、花の蜜は餌ではないということですね?」
だからこそ、先生の人を見下すような、微妙な声色の変化に気づくことができた。
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