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蜜月 40
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恙無く(?)食事を終え、後片付けもお皿拭きを手伝い、何もやることがなくなってしまったプライムタイム。実際には時計が無いので、何時か分からないけれど、いつもならご飯を食べた後は、テレビを見たり、翼とゲームをしたり、明日の学校の用意をしてるうちに、あっという間に寝る時間になるのに、お兄ちゃんと二人きりだと、何をどうしていいのか分からない。
俺は眠くもないのに、お兄ちゃんの太股の上に頭を乗せ、猫のように髪を撫でられている。
「退屈そうだね。お祖父様の書庫に行ってもいいんだよ?」
「んー……」
今日はもういいかな。
何か情報はないかと探しながら、興味のあるところをかじり読みしていたせいで、脳みそがパンパンだ。明日からは情報探しに専念しなきゃ。
ゆっくりと身体を起こし、お兄ちゃんに向き直った。
「…ねぇ、旦那様。お祖父様ってどんな人だったの?」
「お祖父様? どうして?」
「不思議な本がたくさんあるから」
「あぁ…」
かつての宇佐美少年も読んだであろう、お祖父様の蔵書を思い出したのか、意味ありげにフフフと笑った。
「お祖父様の本を読んでると、本当に妖怪とか未確認生物がいてもおかしくないって思えるよね。小学生の頃だけど、僕も影響されて、この森の中に入っていったことがあったな」
この森とは、この家の周りの雑木林のことだろう。奥深くて何かありそうな気はする。
「何かあった?」
「あったよ。獣の足跡がね。お祖父様に『熊が出るから森の奥に行かないように』って言われてたの思い出して、すぐに帰ってきちゃった」
「く…熊っ!?」
「実際には猪だと思うけどね。肉球じゃなくて蹄の形をしてたから」
「蹄…。と…豚足?」
思い浮かんだのは、中華街で出されるアレ。お兄ちゃんが大口を開けて笑い出した。
ハハハハって、こんなに大笑いするお兄ちゃんを初めて見た。
「そう、確かに見た目はそっくりだ」
背を丸めて、くつくつと笑いを噛み殺している。何がそんなにお兄ちゃんのツボだったのか、俺には分からない。俺は面白くないし、自分の事を笑われているみたいでちょっとムッとなった。
「お祖父様は優しい人だった?」
涙目になったお兄ちゃん。俺の顔を見て悪いと思ったのか、はーっと呼吸を整え、メタメタになりながら口を開いた。
「…はぁ…苦し………あー…、優しいっていうよりは……そうだなぁ…」
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