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歪み
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今日も俺は愛しい弟に、愛情とはかけ離れた声をかける。
「お前、勉強の邪魔だから外出てこい」
口からデマカセがポロポロと出てくる。
邪魔じゃない。邪魔じゃない。
お願いだから、そんな目をするな。
「はい……」
弟は俺の言うことを全て聞く。
外に出ていけと深夜に言っても出て行く。
黙れと言えば何も言わない。
全て敬語で話すし、逆らうことは全くない。
それが嬉しくて、悲しかった。
俺は昔から何でも出来てしまった。
授業を何となく聞いていても、テストではいつも高得点。
スポーツも本気を出さなくても、全部出来てしまった。
お陰で先生からの信頼や、親からの愛情を痛いほど貰っている。
その逆で、弟は何も出来なかった。
俺より勉強していたとしても、テストではいつも低得点。授業を聞いているはずなのに、テストの結果が悪すぎて先生に怒られてばかり。
スポーツもこれでもかってくらいの運動音痴。
そのせいで先生からいつも怒られ、親からは無視の対象になってしまっている。
そんな生活が普通になっていた頃には、弟は既に自己愛や自尊心、自分を大切にする心など無くなっていた。
だけど、俺はそんな弟を気持ち悪い程に愛している。
涙目で俺の言うことを聞くところも、震えている声も。何もかもが、愛おしかった。
俺だけが弟に構っている、そんな状況が心躍る程に嬉しかった。
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