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弟が見えなくなったあと、俺は動悸と息切れに襲われる。
とてつもなく吐きそうだった。
いつかアイツに弟を取られる。奪われる。俺の全ての弟を、わけも分からないアイツに。
家の前でゲホゲホしていると、家の中から、タイミング悪く母親が出てきた。
「あら、おかえりなさい。どうしたの?今日は早いわね」
「…ただいま。具合悪くて早退して帰ってきたんだ」
「そう。無理するんじゃないわよ?…ほら、お母さんとお父さんに今日のテストの結果を見せて」
ニコッと優しく俺に微笑む母親に俺は無理矢理作った笑顔で微笑み返した。
そんな所じゃない。けど、俺は親に逆らうことは出来ない。
母親の後ろをつくように、靴を脱ぎ、リビングへと上がった。
リビングには父親がソファーに座って、新聞を読んでいた。
「おかえり」
「ただいま」
俺は挨拶を返してから、鞄の中に入っている今日のテストの結果を見せた。
嫌味なほどの満点。それを見て、父親と母親はニコニコする。
馬鹿みたいに在り来りな言葉で褒められた。
そんな時、弟が帰ってきた音がする。
この両親は、弟の事は無視だ。帰ってきても、知らんぷりをする。
朝ごはんも、昼ごはんも、夜ご飯も作らない。
それが、……この家では普通だった。
弟もそれを難なく受け入れて、自分で身体を売り、そのお金でご飯を用意する。
……それは本当に惨めだった。
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