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俺以外の奴がその本を堪能した後、何故か恋愛トークというものにすり変わった。
アイツ可愛いよな、アイツぜってぇ俺のこと好きだぜ、とか何を話したいのかよく分からない事を嬉嬉として話すソイツらの話を俺は黙って聞いていた。
「なあ、お前は好きな女子とかいないの?」
またもしつこい奴が、俺に意味のわからない質問を投げてくる。
俺は声を出すのも面倒で、首を横に振った。
「まじで!初恋もまだとか言わねぇよな?」
「まだだけど」
「コイツやっべぇ!」
俺の初恋を聞いて、ソイツらはゲラゲラ笑う。
「でもでも、お前、この前クラスで一番可愛いアイツに告白されたじゃねぇか!何で振ったんだよ!……“ フツウ”はOKするぞ?…なあ?お前らもOKするよな?」
しつこい奴は、他二人に同意を求めるように目をキラキラさせた。
同意を求められずとも、首を縦に振っていただろう二人は、首がもげるんじゃないかと言うほど、大きく首を縦に振った。
「“ フツウ”?」
「そう、“ フツウ”!あんな可愛い奴に告白されたら、誰だって心臓がドキドキするんだぞ!好きだって思って、心臓が凄いドキドキするんだよ!それが恋ってやつなんだよ!」
熱弁してきたソイツの口から出た“ フツウ”という言葉に、俺は何かが引っかかった。
ああ、俺は“フツウ ”じゃないんだ。この時、強くそう思った。
俺は、他の奴とは違うんだって。
それからの俺は、家に帰るまでソイツらの話を上の空で聞き、ずっと“ フツウ”について考えていた。
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