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吾輩は茜である(R’s、番外) 6
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吾輩は茜である、ポッと出キャラだったので苗字はまだない
蓮君とは小さいころから家が近くて…いわゆる幼馴染ってやつだ
中学のころから付き合ってるし蓮君のことはたぶん一番よく知ってる…と思う…
「………」
蓮君が口を開けて音楽室で楽器を弾く同級生(蓮君は後輩だって言ってきかないけど)を見ている
目がキラキラして少し前の蓮君みたいでうれしかった
蓮君は中学生の時にベースを始めた
きっかけはクラスの男の子がギターを始めてモテだしたからそれを真似てだったと思う
『ギターを買う!!』って言う蓮君について楽器屋さんに行ったけどその時の蓮君はギターとベースの違いもわからなくって『大きいギター』だと思ってベースを買っていた
茜はそれがギターじゃないってことは知ってたから『こっちの方がいいんじゃないの?』って言ったけど蓮君は『大きい方がいいに決まってる!!』って言ってベースを始めた
途中でそれがギターじゃないって気づいてギターも始めたけどその時には『ありふれたギタリスト』よりも『ちょっとだけレアなベーシスト』に人気は移っていたから結果的に蓮君はモテることになった
楽器をしてる男の子たちにとってもギタリストよりベーシストの方が貴重みたいで蓮君はいろんなバンドに勧誘されてたように思う
目立ちたがりの蓮君は求められれば求められるほどベースを練習してうまくなっていった
そうしてるうちに卒業のシーズンになって、卒業式の後の卒業を祝う会的なので蓮君は推薦入学が決まっている同級生の子たちとバンドを組んでライブみたいな演奏をすることになった
毎日遅くまで練習して家でも練習を頑張っていた
結果ライブは大成功して蓮君はそれがすごくうれしかったらしい
そのバンドの子たち全員が偶然同じ高校に進むこともあってバンドは高校にも引き継がれることになった
でも、高校生になってバンドの人たちは変わってしまったらしかった
いろんな理由でみんな練習に来なくなってバンド活動からは離れていった
茜なんかはライブの成功の高揚感で存続が決定したバンドだしいつかそうなるんじゃないかと思ってたから蓮君の話を聞きながら『あー、やっぱりな』って思ってたけどいつまでも子供みたいに純粋な蓮君にはそれが理解できなかったみたいで毎日つらそうな悔しそうな顔をしていた
そして蓮君はある日そのバンド仲間の人と殴り合いのけんかをして停学になった
結局そのあともさぼったりなんかで学校にあまり行かなくなって蓮君は留年した
その時期の蓮君はもともと素行が良かったわけじゃなかったけどそれでもより相当あれてたように思う
そんな蓮君をなんとかしなきゃって思って茜が受験直前で志望校を変えて、レベルをいくらか落として蓮君と同じ高校に入ったのはまた別のお話だ
親とも相当もめたけどそのときの茜には蓮君がすべてだったから別に良かった、今も後悔なんてこれっぽっちもしていない
とにかく蓮君はバンド活動が続けたかったのに続けることができなくなって相当落ち込んでいた
殴り合いのケンカで解散なんてしたせいでほかのバンドをやってる子たちも蓮君を誘おうとは思わなかった
蓮君はどんどん荒れて無気力になっていった
そんな時だった
『すみません!!篠田って奴いませんか!!』
『!!』
茜と…蓮君ともだけど同級生の男の子が蓮君をバンドに誘いに来た
メンバーがギターとドラムの二人しかいなくてどうしてもベースがほしいと言って熱烈なオファーだった
昔の目立ちたがり屋な蓮君なら『仕方ないなぁ』ってすぐ加入しそうだった
私はこれで蓮君がまた元気になってくれると思ってうれしかった
でも…
『悪いけど別当たってくれる?』
蓮君は茜が思ってた以上によっぽど女々しくなってしまっていた
『え、えぇ…でもお前さっきベースとギターしてるって…』
『昔ね、この年にもなって楽器とかバンドとかダサいじゃん?オレ興味ないから』
『ダサッ…!!』
『行こ、茜…あと敬語使えよ、オレ先輩』
『…へ……』
『じゃね』
カッコつけたつもりなのか何なのかわかんないけどビチクソにカッコ悪かった
小6でおねしょしたのを泊まりに行ってた茜のせいにしたとき並みのカッコ悪さだった
でも後からよく考えたらあれは蓮君なりの自己防衛だったんだと思う
もう期待して傷つきたくないから期待しないようにしたんだと思った
まぁ…だったとしてもカッコ悪いに違わなかったけど…
茜としてはあの二人はきっと高校卒業までバンドを続けそうな感じがしたし、少なくとも前の蓮君の友達みたくベースを頑張る蓮君に心無い言葉を掛けるようには見えなかった
なんでそう言い切れるかといわれると『女の感』としか言いようがないけど茜の感はよく当たる
茜はそんな女々しくて恰好悪い蓮君のためにひと肌脱いであげることにした
同級生…ニノちゃんと龍くんに蓮君の居場所を教えてあげたし、あきらめずに勧誘してあげてほしいともお願いした
でも蓮君はなかなかうんと言わなくて強情だった
なにかに理由をつけては『あいつらもすぐやめるだろ』とか『興味ない』だとか言う
マジでビチクソ通り越してチンカスレベルにカッコ悪すぎてグーでビンタでもしてやろうかと思ったけど茜は優しいから最後にもう一度ぐらい蓮君に素直になるチャンスをあげようと思った
『音楽室だよ龍ちゃん、ちゃんと練習しててね?』
『いいけど…でもそれより先に篠田を…篠田先輩を勧誘しないと…ていうか茜ちゃん…あんまり龍ちゃんって呼ばないでくれるとうれし…』
『龍ちゃんいいからしてて!!』
楽器を弾いてるのを見たことがないといってつっぱねた蓮君に二人が楽器を弾いてるところを見せてあげようと思ったんだ
蓮君がすぐにでもベース弾きたくなるかもしれないからってわざわざ前の日の放課後に蓮君家の物置から蓮君のベースだって持ってきてあげたんだよ?あんな重いのに、えらくない茜?おかげでネイルが…って、それはいいんだけど…
とにかく茜は頑張った、久々に触った蓮君のベースはもしかしたら壊れたりしちゃってるかもと思ったけどきれいに手入れされていてたぶん蓮君はこっそり弾いてたんだなって思った
こうして万全の準備を整えて今の状況が出来上がっていた
これもひとえに茜のおかげだよね、うまくいったら蓮君に夢の国に連れてってもらおう…
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