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吾輩は篠田である(R’s、番外) 5
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次の日も、その次の日もあいつらはオレのところに来た
教室にいても音楽準備室にいてもまっすぐ家に帰ろうとしてみても…あいつらは毎日オレに会いに来た
そのたびにオレはバンドをやる気も楽器をやる気もないと追い返す
「ねぇ~蓮くんホントにいいの?」
茜がいつもの調子の間延びした声で聴いてくる
「いいんだよ…別に…あいつらだってそのうち飽きるだろ…」
「………」
「それにあいつらいっつもオレに引っ付いて来るばかりで楽器弾いてるとこも見たことねぇよ、楽器なんてお遊びなんだろ、どうせ…」
「………」
そう言うと茜は少し悲しそうな顔をした
…そんな顔すんなよ…
茜の頭を撫でてやる
茜の悲しそうな顔を見ると少し昔の事を思いだした
『ほら、部活あるからさぁ~?』
『もう高校生にもなってバンドって言うのも、なぁ~?』
ズキッと胸が痛んだ
まぁ…そりゃ高校生になったらやれることも増えてやりたいこともできるようになって…そっちをやるようになるよなぁ…
茜を撫でた手を眺める
ベースをやってたおかげで人よりも大きくなった手だ
…ベース、ひきてぇなぁ…
皆バンドをやめ、楽器をやめて行く中で一人楽器続けて…でもベースだけじゃ満足に曲も弾けなくて、それでもいつか誰かが一緒にやろうって言ってくれるんじゃないかって続けて、でも結局誰もそんな風に言ってくれることはなくて…結局留年なんかしちまって…
「……はぁ…」
「………」
溜息が漏れた
クーラーが聞いてて誰も使わなくて居心地がいいからなんて理由を付けて音楽準備室に居座ってるけどきっと本質的な理由は別にある…
クーラーと人がいない、居心地がいいなんてのだけの理由なら茜の家でも俺の家にでも行けばいいだけの話だ
そうしないのは………
そこまで考えて考えるのをやめた
気付いたら止まらなくなってまた同じようなことになってしまいそうだった
「……~♪」
「…?」
頭を振って不毛な考えを追い出していつもみたいにやることもなく音楽準備室に茜と向かってると何か音が聞こえた
吹奏楽部か…?
にしては音が軽い…
もう少し進むとそれがドラムとギターと人の声であることがわかった
まさか…
はっとして思わず足を速める
音楽室にいたのはやっぱりあの後輩二人組だった
「~♪~♪」
いつもうるさい方がギターを持って歌を歌い、ぽけーっとした腰ぎんちゃくの方がドラムをたたいてた
……………
特別うまいわけでもない、中の上レベルの演奏で演奏に引っ張られて歌なんてひどいもんだったがひきつけられた
「………」
「………」
そいつらから目を離せずにいるオレを茜が嬉しそうに見つめていた
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