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半分見えない世界2
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一時間ほどのリハビリが終わりいつもの病室に看護師さんに車椅子を押してもらい戻る
(今まで普通に出来てたことが出来なくなるってこんなに辛いんだ…)
最近文字を書いても右側に極端に寄ってしまっていたり、左側のご飯だけ残っていたり、趣味の読書でも本が読みにくかったり、左側にものを落としても拾いにくかったり。
僕は視線を自分の両足に向ける
(このまま歩けなかったら…一生車椅子生活なのかな…)
人間足があるなら自分の足で歩きたいもの
しかし歩けなければイライラだけが増えていく
(はぁ………)
しばらくして病室につくとひとりの男の子がいた
車椅子を押してくれていた看護師さんは状況を察したのか静かに出て行った
「お久しぶり、皐月君、一週間ぶりかな…?」
僕のベットの近くの椅子に葵羽が座っていた。
慣れない車椅子を頑張って動かし自分のベットに近づく
「どうしたの?僕のリハビリ終わるのずっと待ってたの?」
僕は少し驚いて、葵羽に尋ねる
「皐月君の言いたいこと全部聞きに来た。」
「僕の…言いたいこと?」
何を言ってるのかよく分からなかったけど、葵羽の必死に考えた答えなんだと、顔を見て気付く
目の下が腫れていて目の周りが赤くなっていてきっと泣きながら考えたんだと思う
「ここずっと人と話してないんじゃないかなと思って。言いたいこと、聞きに来た」
確かに病院にいたら誰かがお見舞いに来てくれない限り人と話すことは少ない
お母さんや妹がお見舞いに来てくれても言いたいことは言えてなかった
せっかく葵羽が聞いてやると言ってるんだ、言いたいこと全部言ってやろう。
「自分の足で歩きたい」
「うん。」
「半分じゃなくて、広い景色が見たい」
「うん。」
「無くなった左目が欲しい」
「……うん。」
「楽しい毎日を過ごしたい」
「うん。」
「当たり前のことが当たり前に出来るようになりたい。」
「うん。」
「………。」
「ん?」
「もう無い。」
「ホントに?それだけ?」
無理なことや葵羽を傷付けるようなことまで言ってしまい少し後悔する。
「もう…もう、スッキリしたよ、ありがとう。」
僕の言葉に被せるように葵羽が話し出す
「じゃあ、これから少しずつ叶えていこう。」
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