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「…前にも言いましたけど、私の前から消えてもあなたに流れている血は何も変わりませんよ…」
少し、いやかなり焦ったように言う。
「そうやな。お前が俺の目の前にいるだけで、俺の親がどんな親かを思い出す」
だから…、と嶺は冷静な口調で続ける。
「俺はお前の前から消えたい」
「嶺…」
「そんな血で繋がった晴嵐さんには会いたくない。何を言っても無駄や。俺は行かない」
「じゃあキャンセルします」
昴の言葉に嶺は鼻で笑う。
「わざわざ俺に言って、キャンセルするのは店にも晴嵐さんにも悪いから行く、って言うとでも思ってんのか?」
「晴嵐には…、」
「お前は行け。俺は一人でいたい。お前と晴嵐さんがご飯食べてる時ぐらい一人でいさせてくれ。それぐらいええやろ?」
昴が切なそうに目を細めて、嶺を見つめる。
「…嶺、それがあなたの望みですか…?」
嶺は固い表情のまま小さく頷く。
「ああ。一人にさせてくれ。一人になったからってお前から逃げられる訳じゃない。…少しの間だけ一人にさせてくれ」
「……。…わかりました」
昴は立ち止まり、歩きだした嶺の背中が見えなくなるまで、ずっと嶺の背中を見つめていた。
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