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40話
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7時
いつものように着替える2人
しかしいつもより時間が遅く
服も騎士学校の服ではあるものの
いつもの朝の稽古用の体操着ではなかった
特別な日に着る騎士服であった
「愛里紗、行きましょう」
いつもより優しい声、表情を向けるマリー
整った服にストレートの腰まである金髪に
赤いリボンで縛ったポニーテール
窓からこぼれる朝日の光でキラキラ髪が光る
優しい声も表情もその姿も美しいものだった
愛里紗はそれにしっかり答えるように笑顔を向けた
「ええ、マリー
理事長の所へ向かいましょう」
廊下を歩く2人
今は全員騎士の朝の訓練を受けているため誰もいない
ただ廊下には2人の歩く靴音のみ響く
沈黙の中、マリーが口を開いた
「…私ね愛里紗」
「?」
「…貴女という女性と逢えて嬉しかったわ」
真っ直ぐ向いたまま言った一言
その一言は愛里紗の心に深く残った
「私も、貴女に逢えて嬉しかった…」
ー理事長室ー
「マリー・テレシネ
準備が整ったようだ
さぁ、一緒にむかおう」
理事長が言う
それにマリーは頷いた
「愛里紗、君も来なさい
その方がマリーもいいだろう」
「ええ、愛里紗には私の最期の姿まで見てほしいわ
辛いとは思うけども…」
「大丈夫よ、マリー
私はどんな事があっても貴女のそばに居るわ
貴女がこの世から居なくなっても私の心の中でずっといるから…」
それを聞いて安心したマリーはうっすらと涙目になりつつも頷いた
そして騎士学校をあとにし、
特別処刑場へ向かった
「…マリー、君は昨日のヴァンパイア事件でなくなったことにしてある
学校の中ではね…
君の評価が下がるのは辛いからね…」
理事長がそう言うとマリーは
落ち着きのある声で
「ええ、そうですね
その方が私が負け、死まで至るほどの強さのヴァンパイアだと思わせて、今より士気を上げるのもとても良い考えかとお思います」
その言葉を聞いて理事長は少し微笑む
「君は物分りが良くてとても助かるよ」
それから沈黙が続いた
そして3時間ほどである建物が見えた
黒い塔だった
「さぁ、着いたよ」
3人は車から降りると
目の前に大きな柵と門が見えた
門の左右端には門番らしき人物がいた
「騎士学校の理事長
アインツ・クロムハーツ様
手続きなどは全て終わっております
さぁ、どうぞ中へ…」
一人がそういうともう片方にいた人物が鐘を鳴らす
すると門が徐々に開き始めた
「ありがとう
通らせていただく」
そういって3人は
門を通った
「お待ちしておりましたクロムハーツ様
この度はこの漆黒の塔での処刑ご決断をして頂き
誠に有り難うございます
それでは準備は整っておりますゆえ…」
少し腰を曲げたご老体が話し始めた
もう処刑されるのだマリーは
そう思い知らされたのは目の前にあるギロチンと銀の杭、
これはどう見ても生かす気は無い
愛里紗はマリーを見る
マリーは真剣な表情だった
ー…嗚呼、神よ、どうして私たちを引き裂くのです!
マリーが何を悪くしたというのです…
この世には髪など存在しないのですね…ー
うっすら涙目になっていると理事長が
「マリー・テレシネ、
処刑の時間だ
来なさい」
「はい」
そういうとマリーは理事長の元へ歩く
その時足を止めて愛里紗の方を向いた
「愛里紗、泣かないで?
私はヴァンパイアになって、貴女と最期の一夜を共にした時、嬉しかったのよ本当に…
だから、貴女も前を進んで頂戴?」
マリーは最後まで優しかった
愛里紗はぐっと涙をこらえ笑顔でいた
「ええ約束するわ」
そう言って抱きついた
その瞬間にマリーがもう一つの“言葉”を残して
「 」
ー…え?ー
「では、さようなら
唯一無二の私の友よ」
そうしてマリーは愛里紗に自分の身につけていたブレスレットと、リボンを渡し、ギロチンと銀の杭が置かれた部屋へと理事長と向かった
「愛里紗様、貴女には見るのは残酷でしょう
この部屋を暗転させていただきます」
ご老体はそういうと部屋を暗転させた
その間愛里紗は考えた
先程の言葉の事を
どういうこと?
ーねぇ、愛里紗聞いて頂戴
私のこの死を無駄にしないように
この騎士学校にはヴァンパイアとつるむ者が
“存在する”わ…しかもその者も私同様なっている
あとは…任せたわよ?ー
このセリフは…一体何を意味し、
マリーの処刑されたことに関係するのだろうか?
その悩む愛里紗にご老体は何故か悲しげな瞳をしていた
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