アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
78話
-
海璃は巫琥とわかれたあと、美術室へ行った
誰もいない部屋だった
「…ふー…」
ギシッと音が鳴る椅子に座る
瞼を閉じるとさっきの光景が見える
確かに氷琥は可愛い
というか今は綺麗もあるか
有璃は氷琥とは高校が初めての出会いだったはず
それなのにあの行動の速さ
もしかしたら他の奴らも狙っているかもしれない
そう考えると自分も早く行動しなければと思う
というか自分は昔の男の子は
自分だと言えばいいだけのこと
そんな簡単なことだが自分は
そんなに簡単だとは思えない
自分は化け物だ
吸血鬼の血を引いている
死にかけだった俺を助けた吸血鬼、またをヴァンパイア
その赤い瞳、言葉、姿を一生忘れない
そう思いながら近くにある鏡で自分を見る
左右で異なる瞳
片方は真っ赤な赤の瞳、吸血鬼にもらった瞳
もう片方は…うっすらと黒が混じった深海のような色
「…いえねぇよな…自分なんて…」
あの瞳に拒絶されるかもしれないと思うと
胸が張り裂けそうな気持ちになるだろう
考えるだけでもゾッとする
氷琥のために生きていた俺が
氷琥に嫌われるとなると生きている価値が無くなる
そんなことでモヤモヤしていると
「かーいーりー」
ガバッと抱きついてきたパーカーを着た青年
海璃はうおっと声を出す
角が生えた色素の薄い緑色の髪
「何そんなに追い込まれてんの?」
「あ、、緑鬼(りょくき)
お前、勝手にくるなよ学校にー…」
「だって、あんたが思い詰めてた顔してたから
と、苦しそうな気持ちになってるからだな」
じっと見てくる緑鬼
緑鬼は海璃の初めて契約した鬼だった
しかもこいつの能力のひとつが感情共有だ
契約者の俺が辛い気持ちになると緑鬼にまで辛い気持ちが伝わる
緑鬼が辛くても俺にはその辛さは来ない
一方的な感情共有だ
しかしそれでも俺は救われる時が何度もあった
「…なぁ、俺は氷琥に見合う男か?」
突然のセリフに驚く緑鬼
それはそうだ巫琥や大蛇以外にこれを
伝えたことは無かった
だが、次のセリフに海璃は逆に驚かされた
「あんたは氷琥のために今まで頑張ってきたんだから
見合うに決まってんだろ?
この約数年間の思い無駄にすんなよ」
「え?
なんで、それを…?」
感情共有と言っても気持ちの内容が
明らかになる訳では無い
だから、分かるはずがなかった
「あのさ、海璃
俺が何年あんたといると思ってんだよ
昔の写真とか大事にしてたじゃん?
そりゃ聞いてなくてもわかるさ
あの頑張りよう見たらさ」
ニヤッと笑う
それを見て、ははっと笑いながらお手上げだという
「お前といい、巫琥といい、本当にスゲーよ笑笑」
「もっと褒めてもいいんだぞ?」
「調子に乗るな笑」
「まぁ、元気なってよかったよ海璃!」
昔は笑わなかった緑鬼を見ると今は沢山笑うようになった
そういうのを見るのもとても嬉しくなる
ー俺も…少し…前へ進むか…ー
「そうだな
俺も巫琥たちみたいに頑張らなきゃな」
そう言って携帯の中に入っている連絡先に電話した
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
84 / 109