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6夜
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二十分くらい歩いていただろうか、三人とも疲れてきた頃に、やっと目の前に大きな鳥居が現れた。
「やっと……着いた……!」
もうへろへろの一也は、はーっと大きな息を吐くとその目に輝きを取り戻していた。
確かに、足場がしっかりしていない分とても疲れたと思う。
それにしても、この神社は本当に人が訪れなくなってから一度も手入れをされていないようだった。
鳥居は赤いペンキが剥がれ落ち、沢山の蔦が絡まってしまっており、奥の社も随分と廃れていた。
周りも草が生い茂っている。
これでは流石の神様も可哀想だな。なんて他人事のように思いながら満がぼーっとお社を眺めていると、ガランガランと鈴を鳴らす音がした。
思わず驚きそちらを見やる。
「おーまだ生きてる! 」
音の正体は、一也が鳴らした社の前にある吊るされているあの鈴だった。
「あまり弄るなよ! 」
満はドキドキと鳴る鼓動を何とか沈め、一也を注意する昌はさながら母親のようだと先をゆく二人の後を追った。
そして一頻り神社を見て歩き、満足気な一也が最後にと口を開く。
「なあなあ、そこ開けてみようぜ! 」
そことは神様が祀ってあるだろうお社の襖。
「やめておけ。祟られるぞ」
「えーでもさー気になんねー? 」
「ならないよ」
「ならん」
一也の問いに、満と昌は声を合わせて否定した。
「えー満もかよー」
「やめておこう? 」
本当に祟られそう。その言葉は心の奥にしまった。
何故だかここに来てからというもの、満は誰かに見られているような、そんな強い視線を感じていた。
雰囲気が不気味だからそんな気がするだけだろうと言い訳をしようとしても恐怖心は拭えなく、流石の満も限界で早く下山したかった。
駄々をこねそうになる一也を何とか食い物で釣り、鳥居を潜る。
その時後ろから、チリン、と優しい鈴の音が聞こえた気がして、満は即座に振り返る。
しかし何もいないし、いるはずも無い。
自分の空耳に、一層不気味だと思いながら前に向き直ろうとした視線の端で、鳥居の脇に人の姿が見えた気がした。
水色の長い髪、口元が微かに動いていた。
次は振り返る気にはなれなかった。
胸に言いようのない不安感を抱えながらも、やっと昌の実家に戻ってくると、満は心底安心して一つ息を吐いた。
あそこで随分と精神を削られた。
あそこへはもう、行きたくない。
その夜、不思議な夢を見た。
綺麗な男の人が満の前に立っていて、こう言うんだ。
────おいで、美しい子。
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