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16夜
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「うそだ……ぁ、うそだぁ……ぁぁぁぁ……」
満の白くきめ細かい肌に刻まれている、直径二センチ程の丸い、刺青でも、焼印でもない何か。
その印は満の肌より少し濃いクリーム色をしており、円の中には三日月と思われる模様がしっかりと刻まれていた。
まるで、生まれた頃からあったかのように肌に馴染むその印に、満は気持ち悪さで胃からせり上がってくるものを布団に吐き出した。
「満、大丈夫? 」
「あ、ぅぐっ、はぁっ」
「ああ……ほら、全部出しちゃいな、よしよし」
はだけた浴衣を直す気力もなくうつ伏せになったところに、すかさず寄り添ってきた満月は、優しい声音と手つきで満の背中を摩った。
「おぇぇ……」
ひんやりとした満月の直接伝わる手のひらの温度に、更に吐き気が込み上げる。いっその事、思い切り吐ききってしまえば少しは気が紛れたかもしれないが、所詮出るものは胃液で、満が余計に辛くなるばかりだった。
「は、はぁ」
「どう? 落ち着いた? 」
「おねが……ぃ……帰して……」
「……はぁ。 なんで満はそんなことばかり言うのかな。 満の家はここなんだよ、そしてこの私が満の旦那さんなの」
「や、だ……お願いします……! せめてこの印を……」
消して。とは続けられなかった。顔を上げた先にいた満月は氷のように冷たい瞳で満を見つめていた。
「満、この証は消せないんだよ。何故なら、私が満を求めて、同じように満も私を求めたから」
「あれは、無理矢理……っ! 」
「アハハッ! 私が無理矢理名前を呼ばせたと思ってるの? 満は素で私を求めたことを認めたくないんだね! じゃあ教えてあげる。 この証はね、ただ名前を呼んで刻まれるようなそんな簡単なものじゃないんだよ。 お互いが求め合わないと、必要だと感じないとこの印は刻まれない」
「何が言いたいんだ……」
「ということはだよ、満は私を必要だと感じて、自分の意志で私を深く求めたんだ」
「っ! そんなっ! あんな汚いやり方……っ! 」
「けど、最終的に満は私に全てを預けてくれた。満も気持ちよかったんでしょう? そしてもっと深い快楽が欲しくて私を求めたんだ」
あの時の光景を思い出しているのか、満月は恍惚とした表情で満の後頭部に手を差し込むと顔を引き寄せる。
「ちが……そんな……違う……! やだっ……! 」
もうすぐで唇が触れるというところで、満月はピタリと静止した。しかし、後頭部は押さえられたままで。
「はぁ、どうしてそんなに私を拒絶するの。悲しいなぁ悲しいなぁ悲しいなぁ……悲しくて、寂しくて、どうにかなってしまいそうだよ……どうしたら……あ、そうか」
顔を酷く歪めていた満月は、何かに気づいたようにそう呟くと途端に口角を釣り上げた。
「満に帰りたい場所が他にあるのがいけないんだ。ああ、そういうことか。そうと分かったら早々に始末しなければ……」
「え……? それって……どういう」
「そのままだよ。満の記憶にある全ての人間を……」
「殺すの……? 」
「殺さないよ。これから起こる出来事は────不運な事故だ」
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