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17夜
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「や、やめて! そんなこと……! 」
「満は黙っててね。 あ、それとも見てみるかい? 満の大切な人の最後」
「やだっ……! 」
「満に私の眼を貸してあげる。ほら、私の目を見て手を握って」
そう言って、満の有無も聞かずに満月は満の片手を取ると、無理矢理瞳を合わせた。
目を逸らそうと満は藻掻くが、まるで金縛りにでもあったかのように身体は動かず、目を閉じることさえも許されない。やがて、大粒の涙を流す満の瞳が満月の瞳のように美しい鮮やかな青に変わった。
「うーん、じゃあ手始めに」
「いやだっ、やだぁ……! 」
「ほら、見てごらん」
「……ぁ……あ、昌、一也っ! 」
なんと不思議で残酷な事だろうか。
今、満の目の前には確かに、唯一無二である昌と一也の姿が存在していた。
同じ地に立ち、二人の目の前にいる。
「おい! 昌、これ! 」
「これは……! 満は何処だ!? 」
場所はあのコンビニの前。辺りはまだ暗かった。満はもう随分と長い時を過ごしていたように感じていたが、満が満月と居てまだいくらも経っていないようだ。
二人はコンビニの前に落ちていた──満が落とした──レジ袋を拾い上げると、焦った様子で周囲を探したり、コンビニの店主に事情を窺った。
しかし、何の手がかりも掴めなかったのか、またコンビニの前に戻ってくると二人は顔面蒼白にして項垂れた。
満は「俺はここにいる」、と言いたいのに二人に声は届かない。
「昌ぁ……っ! 一也……! 」
駆け寄る満の姿も当然ながら二人には見えなかった。
⇔
数時間前、それは満があの神社に誘われた時間まで遡る。
満がコンビニに行って、かれこれ一時間が経とうとしていた。
「なぁ、あのコンビニってこんなに時間が掛かるほど遠かったか? 」
「いいや、すぐそこだが……」
そう言って、昌が指さす先にはコンビニの明かりが僅かに見える。
「俺らが飲むもん分かってるだろうし、選ぶのにこんなに時間を取られる筈ないんだけどなあ」
「もしかしてなにかトラブルに……」
「……迎えに行こう」
「ああ」
二人は胸に言い知れぬ不安を抱え、早足に家を出た。
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