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18夜
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半端小走で二人はコンビニへ辿り着いた。
こんな田舎のコンビニ、夜中にはもう誰も来ないであろうが未だに店内は明るかった。
ならば満もまだ店内かと昌は予想したが、それは一也の焦った声に破られた。
一也が呼ぶ方へ行くと、一也はコンビニの出入口から少し離れたところに落ちているレジ袋を拾い上げていた。中身は缶ビールやチューハイに少しのつまみが入っており、一也の好む甘めのものから、昌がよく飲んでいる度数が高めのものと、それぞれの好みの酒が入っていた。二人は満が購入したものだと瞬時に理解すると、当の本人が見当たらないことに更なる焦燥を感じた。
昌と一也は手分けしてコンビニ近辺を探し回るが、如何せん周囲が暗くて、コンビニの明かりと各々の携帯のライトのみでは満足に満の捜索もできなかった。
コンビニの店主には一番に、満に何か不審な影が無かったかを訊ねたが、満足な情報が得られる筈もなく、二人は手も足も出せない状態となっていた。
「満……一体どこに行ったっていうんだよ……」
「……」
コンビニの壁を背に項垂れた一也から発せられた悲痛な声は、夜の闇に嫌に大きく響き渡り、二人に追い打ちをかけるように虚無を与えた。
やがて昌の呼び掛けで一度家に帰った二人は、夜中にも関わらず雅昭と美乃を叩き起こして居間に呼び出すと、家が騒動になるのを承知の上で、満が行方不明になってしまった事の経緯を語ることにした。
しかし、雅昭と美乃は話を聞き終わるに、冷静なままだった。昌の、皆パニック状態になれば収集がつかなくなるかもしれないという問題は、杞憂に終わった。
「取り敢えず昌、警察に電話して。その様子だとまだしていないんでしょう? 昌らしくもないわね」
「あ、ああ」
美乃にそう告げられて、ようやく冷静な状態で無いのが昌自身だと気づいた。
満の居場所や身の安全ばかりを案じていた昌は、捜索願いを出すことをすっかり忘れていたのだ。
震える手で携帯をポケットから取り出すと、電話を掛けるべく、昌は一度居間の外へ出て、縁側に立ち竦んだ。
「……俺、もっかい探してきます」
昌が出ていって三分も経たないうちに、一也がそう言って立ち上がった。顔色はとても悪く、後悔や焦りで酷い顔だ。
「待て、一也くん。気持ちは分かるが外に出るのは朝まで待とう。田舎の夜は街灯も少ないから危険だ」
「けど……! 元はと言えば俺のせいなんだ! 満、今頃どこかで心細くなって……」
「父さん! 母さん! 庭の木が燃えて……!! 」
一也の言葉を遮って、襖が壊れそうな音を立てて勢いよく開いた。
先程の焦りとはまた別の焦燥に駆られた昌が、広い庭の大木を指さす。
確かに、燃えていた。昌の向こうに見える、居間の正面に立派に生えていた大木が、ありえない程強い炎に渦巻かれ轟々と音を上げていた。
「う、うそ……」
「い、急いで水を! 昌と一也くんは一刻も早く近所の人たちを避難させろ! 」
「ああ! 」
「は、はい! 」
雅昭が的確な指示を出している合間にも、燃え落ちた葉や枝が、地面の草花を燃やし、どんどんと炎が燃え広がっていった。
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