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午前3時
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ふと、目が覚めた。
スマホの眩しくて味気ないロック画面を見ると、午前3時を過ぎている。
「ふぁ…ねむ……」
さーもっかい寝よーと布団に潜り直し、目を瞑った。
……が、謎の違和感に気づく。
確認しに起き上がり二段ベッドの上の段を覗くと、案の定そこに双子の兄、楽の姿はなかった。
またか……。
全てを察した。
楽は今多分、というか確実に長男、里冉の部屋に居るだろう。
理由としてはあれだ、夜に恋人を部屋に呼んですることと言えば…………である。
別に悪いとは思わないし恋人なんだしそれが普通なのだろうけど、実の兄弟がそういうことをしているということはこちらとしてはもちろん知りたくはないわけで。
何が好きで双子の兄と一番上の兄の情事のタイミングをリアルタイムで知らねばならんのだ。心底どうでもいいし知りたくない。
こういう事は初めてではなく、正直たまにあるのだが、だいたい朝方に楽がいないことに気づくので事は終わっている…が、今日は違ったらしい。
「…………はぁ」
ちょっと!!聞こえてるんだけど!!!と向かいの部屋に殴り込みたい。流石にしないけど。見たくないし。
気にせずに寝たい。明日も学校だし、眠い。
だが目を瞑ると余計に聴覚が研ぎ澄まされてしまって気になる。
……迷惑だ。
悪いとは言わない。言わないけど。それでももう少しその…声とか抑える努力をして欲しいものだ。
ほんっと、何が好きで双子の兄の普段の声から考えられないくらいの甘ったるい嬌声を壁越しに聞かねばならないのだ。そんでやたらエロいのはなんでだ。本当に連れ込まれてるのは楽なのか。
……まあ上に居ないんだから楽だろうな。兄貴も超一途だし。
改めて認識すると鳥肌が立った。やめよう考えない方がいい。
ずっと寝ようとはしているもののやはり気になって眠れない。
聞きたくないものほど聞き耳を立ててしまうのは何故なのだろうか。心底やめたい。
ていうか3時って。何時からやってんのか知らんが3時って。何ラウンドする気なんだあの2人。
……いや別に知りたくもないし興味もないけど!ないんだけど!
「何してんだ俺……」
ばふっ、と枕に顔を埋めて、そう口に出す。
本当に何をしているのだろうか。さっさと寝ればいいものを。
仕方ない、あまりしたくないのだが、イヤホンで音楽を聴きながら寝るか……。
そう思い、スマホを開く。
ミュージックのアプリをタップして、プレイリストを開き、シャッフル再生。
流れたのは楽が好きなバンドの曲だった。
しばらく聴き入っていたが、この部屋自体は静かなせいか普段より歌詞が聞き取れる。そして何故かやたら色っぽい歌詞だったことに気付かされてしまう。普段聞き流していたがこんなことを言っていたのかこの曲…。
だんだんイケナイ想像が頭をよぎりそうになり、耐えられず……くそっ!と次の曲へと飛ばした。
そうして、しばらく寝る努力はした。
努力もしたが、プレイリストも一周した。
いやもうこれ完全に目覚めちゃったやつじゃん……何してくれてんの楽のバカ……エロ唐辛子……唐辛子もげろ………。
そんな理不尽で尚且つ意味のわからない罵倒を心の中で繰り返す。完全なる八つ当たりだ。ただこうなったのは確実に楽のせいだ。それは間違いない。責めはしないけど楽のせいであることは変わりない。責めはしない。全てはこのタイミングで起きた俺が悪い。
もしやそろそろ終わったのではないか?と音楽を止めイヤホンを外してみると、声は聞こえなくなっていたがちらほらと微かにベッドの軋む音が聞こえるのでまだ起きてはいるようだ。
おわ…終わった……のか……?んん……?
安堵からか、はぁぁ…というため息が漏れた。
勝手に聞こえてきていただけなのになぜ俺がこんな気分にならねばならないんだ。何故、聞いてしまった、知ってしまった、と所謂背徳感というやつを肌で感じながら眠る努力をせねばならんのだ。全く、ツイてないというか、シンプルに最悪だ。
……楽、今日絶対保健室行くなアレ。
全く、こんな時間まで可愛い弟を寝かせず相手させ続けるなんて、いったい兄貴は何を考えているのだろうか。頭は大丈夫なのか?…いや実の弟を犯している時点で大丈夫ではなかったな。
まあ楽がそれを望んでいるのならいいし、元々俺がどうこう言えた話じゃないけど。いくら支障が生じようが本人さえ負担に感じてないならそれでいいのだ。周りに迷惑さえかけなければ。……あ、でもサボられる先生は迷惑か。
よく考えたらこんな時間まで起きてしまっている俺も寝不足間違いないので、たまには保健室について行ってみようかな、なんて。二人揃ってサボリは流石にだめだな、やめておこう。授業も聞きたいし。
ふと空が明るくなってきたことに気づき、やばいやばいと布団を被った。
「おーい雨立双子、大丈夫か〜?」
「大丈夫っす〜」
「大丈夫です」
翌日、体育の授業。
「お前ら2人とも見学なんて珍しいな。泪先生とこ行くか?重度の寝不足?なんだろ?」
「あーまあそんなとこっす…へへ…」
「俺も寝…」
「へ?」
「あ。いや俺はなんでもないです…ただの体調不良です」
危なかった、起きてたことを自己申告しそうになった。
正直俺は体育に出たくないだけで重度というほどの寝不足ではないのだが、体育好きな楽が見学ということはそれ以外にも理由があるのだろうと察する。詳しく知りたくはないけど。
「そうかそうか、午後の授業のためにもダメそうなら無理せず保健室いけよ」
「はーい」
「分かりました」
「……お前さっき寝不足って言いかけてなかったか」
「……あー…いや?空耳じゃない?」
隣で体育座りをしている楽が、隠すように赤い顔を膝に埋めたのは見なかったことにしておこう。
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