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蒼②
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机に突っ伏して、窓からの景色を見ることが好きだ。
実に生産性の無い時間ではあるが、いろいろな発見があって楽しい。
「じゃあ第3段落から。森田、読んで。」
教科書すら開いていないのがバレたら怒られるんだろうなぁ、と思った矢先、
国語教師である宮内先生に、後頭部を教科書ではたかれた。
後ろから、仲の良い友人たちの笑いを押し殺す声が聞こえる。
「いってぇ…」
痛む後頭部をさすりながら、上体を起こす。
宮内先生の背中を睨むと、ふと振り返った奴とばっちり目が合った。
べっ、と舌を出し威嚇する。あ、無視された。
「はい、そこまで。
この段落は筆者の揺れ動く心情が比喩で多く表現されていて…」
喋りながら黒板に白い文字の羅列を書いていく。
こことここは対比になっているだとか、
心情の変化を飛行機雲として表しているだとか、
まぁ真面目に授業を進めている。見た目からはどう考えても文系っぽくないのに。
―あー、ねみ…
頬杖をついてふと宮内先生の顔を見る。
この前俺が髭のことを指摘したからなのか、髭が綺麗に剃られている。
あとは集中すると下唇を触る癖があるのか。
俺が凝視していることにも気づいていないし。
―って、おいおい…何見てんだ、俺
再び机に突っ伏して窓の外を見やる。
空には、一筋の飛行機雲が白い跡を残していた。
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