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蒼③
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「俺の授業で寝てんじゃねーよ」
白い煙を吐きながら恨めしそうに俺を見る。
俺は今、宮内先生に呼び出されて国語科準備室にいる。
「生徒の前で煙草吸うようなモラル無い奴に言われたくねぇ…」
「喫煙スペース、副校長がいるから嫌なんだよ
あいつの話長ェし、つまんねーし」
「うわ、言いつけてやろ」
無言で睨んできたので思わず肩をすくめる。
そして暫しの沈黙が続き、何だかむず痒い居心地になり、立ち上がって大きく伸びをした。
「宮内先生は」
「ミヤでいいよ、前もそう呼ばれてたし」
「ミヤ先生は、授業準備以外でもそうやって休憩に来るんですか?」
「そうだね、煙草休憩のため。
……あとは、月島君とお話しするため?」
窓にもたれて、煙草の灰を落としながらわざとらしくニコッと笑う。
「…暇つぶしで呼ばれてんなら俺帰りたいんですけど。友達と飯食う約束断って来てんのに」
「ほー、帰りたいなら帰っていーよ。
あ、そこのノート取って」
「帰す気ないっすよね…」
ため息をつきながらノートを渡すと、彼が煙草を口の端に咥えたまま何かを書き出した。
「何ですかそれ」
「んー、簡単な振り返りと次の授業の為のまとめノートみたいな?」
「へぇ…」
「月島爆睡って書いとくわ」
「いや、つーか他にも寝てるやついたし」
「あ、そういやさぁお前の下の名前何ていうの」
―話が次から次へと飛ぶ人だなぁ…
「ショウです。今宵の宵って書いてショウ」
「へー、綺麗な名前なんだね
名前だけじゃなくて、顔もだけど」
途端に顔が熱くなる。
咄嗟に顔を下に向け、頬を掻いた。
真顔でそう言われたものだから、恥ずかしさが倍増だ。
「かわいー、照れてんの?」
反論しようと思いミヤ先生の方を向くと、唇がチュッと音を立てて、熱を感じた。
─ん?
「……………………………………な」
「俺の名前はね、蒼(アオイ)っていうの。」
―ちげーよ、そうじゃなくて、今
「………………………い、……今、キ、キキキ、キス…」
「したよ、可愛かったからつい」
「!!?!?!」
口元を手の甲で押さえ、思わず部屋を飛び出した。
後ろから間延びした「ショウくーん」と呼ぶ声が聞こえるが、無視を決め込む。
―男に、
―教師に、担任に、
―キスされた………!
妙に鼻の奥に残る煙草の匂いと、
頬に当たった髪の毛のくすぐったさと、
それと……
唇に触れた熱が何よりの証拠であるかのように。
どんなに走ってもそれだけは消えなかった。
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