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煩悶②
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無我夢中で廊下を駆けているとき、
頭の中をぐるぐると走馬燈のように数分前の光景が流れた。
人目も憚らず、勢いよく教室の扉を開けて、
自分の席に座り、顔を伏せた。
―やべぇ、やべぇ、やべぇやべぇやべぇ
―やばすぎるよな、だって
窮地の事態に陥った時、人間は語彙力が急激に下がることがこの年になって分かった。
「おい、大丈夫かよ月島」
周辺で昼ご飯を食べていた友人たちが心配そうに顔を覗いてくる。
「最近昼飯んとき月島いねーよなって話してたんだよ」
「と思ったらすげぇ形相で帰ってくるし」
顔を上げると、ホレ、と目の前にメロンパンを突き出された。
サンキュ、と言って一口齧る。
「大丈夫、もうこれからずっと昼飯はお前らと食うから」
そう意気込むと、それはそれで気持ち悪いと一蹴され。
「ま、何かあったら言えよな」
一番仲の良い沢村が屈託のない笑顔でそう言った。
力なく返事をし、スマホゲームの話題で盛り上がる彼らの姿をぼんやりと眺める。
好きなはずのメロンパンでさえ、味がしないような気がして仕方なかった。
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