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煩悶③
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放課後、沢村の家に集まって新発売のゲームをやろうと誘われたが、何だが気乗りせず断ってしまった。
こういう時は、いつも決まっていく場所がある。
保健室は、眠い時とか授業をサボりたいときに使うが、
それとはまた違う。
俺の、憩いの場所。
ミヤ先生で言う国語準備室のような…………って、
今あいつの話は厳禁だろ…
夕陽が第二校舎の窓から差し込んで、廊下を橙色に染める。
階段を上ってから少し進んで、重厚な扉を開ける。
第一音楽室。
湿っぽい空気と古臭い教室の匂いが不思議と安心する。
放課後はどの部活もここを使っていないため、専ら俺が占領している。
壁に立てかけてあるアコースティックギターを手に取り、
特に何も考えずにただひたすらに弾く。
この時間がたまらなく好きだ。
「…♪~♪」
一人で煩悶していることを振り切るように、つい無意識のうちに鼻歌交じりになる。
イヤホンを片耳だけつけて、好きなバンドの曲を聴きながら弾くと、一瞬だけ心の靄(もや)が取り除かれた気がして、心地よかった。
そのまま無心になって弾き続け、次がサビだ、という時に突然片耳のイヤホンが外れ、聴覚がクリアになった。
と同時に、背後に人の気配を感じた。
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