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疑心暗鬼③
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勇気を出してそう言うと、束の間の沈黙が流れた。
彼の顔を見ることが出来ず、しばらく床を見つめていたが、余りにも無言が続くので、目線だけちらりと上に戻した。
煙草を指に挟んだまま、ぽかんと口を開けて俺を眺める彼の顔。
行き場を無くした煙草の灰が、床に落ちた。
「ちょ…灰落ちてる」
「…あ、あぁ、やべ」
珍しく慌てる姿を見て、少し緊張が解けるのを感じた。
そして再び沈黙が流れる。
「…何か言えよ」
耐え切れずそう切り出すと、堰が切れたように彼は笑い出した。
「…何が可笑しいんだよ!悪かったな、女々しくて!!」
「はは、わり…そんなことで悩んでたのかと思うと可笑しくて」
「そんなことってなんだよ!俺にとっては…」
怒りを漏らしたその瞬間、身体がふわりと温かいものに包まれた。
どうやら、彼の腕の中にすっぽりと収まっているみたいだ。
一度強く抱きしめられた後、腰を優しく撫でられる。
「ちょ…今は違うだろ、つーか誤魔化すな!」
「ごめん、可愛すぎて…」
気持ちとは裏腹に、腰を撫でる手が往復する度にぴくりと反応してしまう。
密着した彼の身体から、早く脈打つ鼓動の音が伝わってくる。
顔を見ようと首を捻ると、真っ赤に染まった彼の耳が見えた。
「……好きでも無い奴に、こんなことしないよ」
「…ん」
「結構前から俺、べた惚れだったと思うけど?」
「いや……からかってるのかな、って…
それに、ちゃんと言ってもらったこと無いし…」
「…何を?」
「い、言わせんな!分かってるだろ…」
軽く肩を小突くと、急に両手で顔を包まれ、上を向かされる。
吸い込まれそうな瞳をしばらく見つめていると、俺がずっと聞きたかった言葉を、彼はゆっくりと零した。
好きだよ、と。
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