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疑心暗鬼④
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その一言を聞いただけで、こんなにも心が軽くなるとは。
靄が一気に晴れて、胸の奥がじんわりと温かくなる、そんな気持ちだ。
顔が自然と綻んでしまうのを抑えていると、唇に触れるだけの軽いキスをされた。
不意打ちではあったが、何やら自制しているような気がして思わず本音を零してしまう。
「…もっとがっついてくるかと思った」
言ってすぐに「あ、やっちまった」と思ったが、案の定彼はギラギラとした目でこちらを睨んでいた。
「こっちは必死で我慢してるってのに…わざと言ってんの?」
「いや…そういうつもりじゃなくて……普通に疑問に思って…」
「次、授業あるんだよ。無ければ絶対帰さなかったのに」
悲しげに溜息をついて、今度は額にキスを落とした。
何だかもどかしくて小っ恥ずかしい。
「じゃあ、急いだほうがいいんじゃ」
「うん、もう少しだけこのままでいさせて」
抱き合う形のまま俺の肩に頭を乗せて、首元に鼻先を擦り寄せてくる。
何も言葉を交わさないけれど、決して息苦しくないこの僅かなひと時。
くすぐったい幸せの中に、身が溶けていくようであった。
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