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熅れ②
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窓の外で幾重にも蝉の鳴き声が重なる。
汗で張り付いたシャツの上に乾いた冷風が撫で、とても心地よい。
遅刻ギリギリで教室に駆け込んだが、どうやら間に合ったようで、クラスメイトは明日に控えた夏休みに胸躍らせ、浮足立っていた。
「そろそろ終業式始まるぞー早く体育館に行けよー」
ミヤ先生が廊下から顔を覗かせそう言うと、慌ただしく皆が動き出した。
この涼しい教室でしばらく休みたい気分であったが、重い腰を上げてノロノロと沢村たちに続いて歩きだした。
そして、壁に寄りかかってその様子を眺めていたミヤ先生が、横を通りすがる俺の耳元で短く囁いた。
「放課後、残れ」
『え?』と思わず口から漏れ、振り返った時にはもう彼は背を向けていた。
胸が静かにザワザワと騒ぎだす。
―何なんだ…?
意識を日常に戻すと、沢村たちがプールに行くか海に行くかで揉めていた。
いつもと変わらないその光景に胸を撫で下ろし、急いで後を追った。
いよいよ明日から夏休みが始まる。
油彩絵の具のような密度の高い濃い青が、空一面に敷き詰められていた。
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