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灼熱③
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奇声を上げながら湖に飛び込む奴らの横で、
俺は肉汁を滴らせながら肉を頬張っていた。
「美味い…」
大自然の中で食べる食事はどうしてこうも美味しく感じるのか。
口内と鼻腔に広がる香ばしい香りに、思わず頬が緩んでしまう。
「つ、き、し、まー!」
その声と同時に全身ずぶ濡れの沢村に、後ろから羽交い締めにされる。
「うわ、なんでお前そんなずぶ濡れなんだよ」
「湖に飛び込んできた」
「馬ッ鹿じゃねえの…」
「お前も行けー!」
ドン、と背中を押され思わずよろめくと、
体格の良い石川と黒井に抱えられ、湖の傍まで連れて行かれた。
「え、おい、まさかだとは思うけどやめろよ?」
「とか言ってるけどしっかり水着着てんじゃん!よし、行くぞー!」
せーの、と言う掛け声と共に、俺は冷たい湖面に放り投げられた。
瞬時に辺りは水中の青に変わり、視界の端に泡が列になって浮かんだ。
水面を叩くような音と、周りの歓声が聞こえる。
程なくして、石川と黒井も自ら飛び込んできて、何がしたかったんだコイツら、と言った感じだが。
嫌だと言いつつも、この暑さだ。
何だかんだ水浴びも気持ちが良くて、ついつい我を忘れて楽しんでいた。
ひとしきり暴れて笑い、ふと陸に目をやると、ミヤ先生が楽しげに皆と肉をつついていた。
あ、起きたんだ。とほっと安心したと同時に、
胸の底に突っかえるようなモヤモヤが生まれた。
─・・・なんだこれ?
不思議な感情に戸惑っていると、ふと目が合った彼に、片手で手招きをされる。
引き寄せられるように、いつの間にか湖から上がって歩き始めていた。
「肉、美味い?」
自分も先程食べていたのに、思わずそう尋ねてしまう。
「ん、美味いよ」と柔らかく彼は微笑むと、徐に羽織っていたパーカーを、俺に渡してきた。
「え、何?別に寒くないよ」
「いいから着て」
「でも、濡れちゃうし」と零した言葉を遮るように「いいから」と塞がれる。
その行動の意味を理解したのは、暫く経ってからのことなのだけれど。
多田の親戚の叔母さんから酒を勧められる彼の横に座り、相変わらず馬鹿騒ぎをしているクラスメイトを眺めていた。
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