アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
灼熱⑤
-
「花火?」
「そ、よっちゃん達が死ぬほど花火用意してくれたから、やろうぜー!」
周りに知っている奴らがうじゃうじゃいる中で情事に勤しもうとする、危機感の無いミヤ先生を一発殴って外に出ると、
花火を大量に抱えた石川にそう呼び止められた。
「やるやる!ロケット花火やりたい」
「いっぱいあるぜー!てか、宮内先生知らね?」
「知らねえ」
しらを切り、わざと聞こえるように言い放つ。
楽しげに花火をするみんなの元へと足を早めた。
火花が四方八方に様々な色を撒き散らしながら、やがて闇に溶けていく。
華やかで彩りが美しい花火だが、どことなく存在が儚いのは、終わりのあの散り方のせいなのだろうか。
音を立てて光を放つその姿に皆歓声を上げるが、徐々に現れる無音と空間の黒を無言で見守る。
その艶やかな落差は、詩に喩えられたように。
「閑けさや 花火消えたる あとの星」
痛む後頭部を擦りながら、ぽつりと呟いた、彼。
空には砕けた宝石のような星が散らばっていた。
「おい、よっちゃんがロケット花火一気に5発打つらしいぜ!」
期待を含んだ大声が聞こえ、センチメンタルなムードをぶち壊しにされる。
馬鹿だなぁと思いつつも結局野次馬根性で見に行ってしまう自分がいた。
恐る恐る火をつけるへっぴり腰のよっちゃんが面白くて、思わず吹き出してしまう。
煙幕が辺りを包み、間もなく爆鳴が鼓膜を震わせた。
「アホだな」
その声に振り返ると、酒を片手に呆れたように眺めるミヤ先生の姿があった。
「人のこと言えねーと思うけど」
「あそこまでアホじゃない」
「そうですか……」
一応取っておいた線香花火を渡すと、ライターを取り出して直に火を付けようとしたので「風情がない」と俺は怒った。
すると、「あ」と思い出したように彼は空を見上げた。
「さっき、星がすごく綺麗に見える場所見つけたから、行かない?」
「え、何その口説き文句みたいなの。嫌だけど」
「いいから、行くぞ」
拒否権は無いのか、と思いつつ手を引かれ喧騒から離れていく。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 96